ザテレビジョンがおくるドラマアカデミー賞は、国内の地上波連続ドラマを読者、審査員、TV記者の投票によって部門別にNo.1を決定する特集です。

最優秀作品賞から、主演・助演男女優賞、ドラマソング賞までさまざまな観点からドラマを表彰します。

第115回ザテレビジョンドラマアカデミー賞主演男優賞 受賞インタビュー

(C)カンテレ

草彅剛

素晴らしい先輩と若い方たちに挟まれて幸せな現場でした

7回目の主演男優賞を受賞された草彅剛さん。前回、主演男優賞を受賞された「嘘の戦争」以来、6年ぶりの主演ドラマでの受賞です。今のお気持ちをお聞かせください。

ありがとうございます。本当にうれしいですね。久しぶりの連続ドラマでの主演だったので。6年ぶりかな。「嘘の戦争」(2017年)以来だったので、うれしさと、あとみんなに感謝ですかね。このドラマを楽しみにしてくれた方の熱意と応援の力があってとれたことと、僕はキャスト、監督、スタッフの代表で頂いていますけど、みんなの力があってこそなので、感謝の気持ちでいっぱいです。

演じられた鷲津亨役に関して意識したことはありますか?

「罠の戦争」は、「銭の戦争」(2015年)「嘘の戦争」(2017年)とバトンをつないで大きくなった作品で、作品は違えどスタッフはほぼ同じ。毎回僕が持っている世界観や気持ちを120%投影したり燃やしたりできる役を頂けているので、楽しくやっています。

ただ今回最初に「罠の戦争」を読んだときは、前の2作と比べると一番普通の役だなと思って、正直(台本を)読んでて物足りなさがあったんですね。前2作は現実離れした役だったので、最初からドキドキワクワクしてたんだけど、おとなしいな…と思ったんだけど、「ちょっと待てよ!」と。第1話のリンゴを潰すシーンとか、これは面白いんじゃないかと。あそこでじわじわきてスイッチが入った感じはありましたね。

ずっと一緒にやってきた三宅喜重監督と河西秀幸プロデューサーと脚本家の後藤法子さんが考えるものだから、これは身近な人物だからこそ、視聴者の方を引きつけるような役として作っていけるんじゃないかなと思って。普通の人間が一番身近で感情移入できて、でも怖い部分がたくさんあるんじゃないか。そこだよな、面白いところって。そういった感じで方向がつかめた気がしました。

だから、僕は本当に何もしてなくて。たとえばタイトルバックの毎回写真が出るところも、第1話から全部撮ったんですね、一緒に。僕は先の話は全く分かってないけど、毎回ハマる写真が撮れているってことは、監督や河西プロデューサーの中で最後まで世界観ができていたんだなと思って。いいチームに恵まれてラッキーだったなと思います。僕は何も考えず、台本の通りやっていれば大丈夫なので。


愛する息子が事件に巻き込まれ、その犯人への憎悪、復讐(ふくしゅう)を目的に犯人捜しが展開されていましたが、後半それだけではなかったという展開でした。権力をつかむ側に行き、逆に憎まれる立場へというどんでん返しもありましたが、最初どの程度まで話は聞いていたんですか?

最初に聞いたときは後半の展開はあやふやしていて。あんな闇落ちするような感じではなく、だけど犯人捜しをするだけではないなっていう雰囲気の話はされてましたね。前2作も謎めいた、いいヤツなのか悪いヤツなのか分からない面はあったから、空気感でトーンや色というものが変わっていくのは自分の中で感覚的につかめていて。そこはチームワークですよね。だって、河西プロデューサーなんか毎日現場に来てるから、パソコン持ってさ(笑)。そこでの会話とかで、これは闇落ちするのか?みたいなことも感じ取れたから、難しくはなかったですね。ゲストの方が来たり、秘書だったのが選挙に出たり、1話1話で気持ちが変わっていくので毎回楽しんで演じていました。


印象に残っているシーンはありますか?

久しぶりに六平直政さんと演じたシーンかな。六平さんは「嘘の戦争」でも共演しているんですけど、第4話で六平さん演じる鰐淵と河原で対峙(たいじ)するシーンがあって、あれすごい好きで。そこからまたストーリーが動きだすんですよね。(カメラの)レール敷いて、長回しみたいに撮ったシーンなんだけど、僕が太陽を背負ってて、後ろに可南子(井川遥)がいて。まさしく出馬するに当たって、可南子と気持ちをそろえて、息子を突き落とした犯人が隠蔽(いんぺい)された事件に立ち向かっていく2人の決意の強さみたいなものがそのカットに出ていて好きです。


鷲津が代議士になってからは永田町でバチバチとするシーンもありました。

先輩方と一緒のシーンは本当にしびれて。貫禄があって迫力があるから、負けないようにしないといけないなって。後半、鶴巻幹事長(岸部一徳)に食らいついていくシーンとかはすごく印象的でしたね。幹事長のセリフにもグッとくるものがあったし、幹事長と対峙してるシーンがいくつかあるんですけど、鷲津亨の対峙する感じが明らかに変わってくるんです。最初は家族のために幹事長に訴えかけてるような人が、いつのまにか幹事長と同じような人間になって、権力にとらわれていく。同じ人間が2人いるんじゃないかなっていうのは面白いなと思いながらやってました。


毎回わなをかけあう展開で迎えた最終回。ご自身ではどう思われました?

11話まであって、10話を読んだとき、今までの復讐シリーズもどこに着地するのかドキドキワクワクしてましたけど、すごかったですよね。ここまでダークサイドに寄ってて、鷲津の周りからみんな離れていっちゃって、どういう最後になるのかなと思ったけど、一番衝撃を受けたかもしれない。そうくるかと。可南子が政治家になって、僕がまた元の秘書に戻るって。でも、そこがすごく好きな展開でした。


ちょっと予想外でした。

でしょう? だからわなだよね。視聴者に対してわなをかけてる。面白いよね。鷲津亨が視聴者に最後大きなわなを仕掛ける、それが「罠の戦争」です(笑)。


共演者の方ともとても仲が良かったそうですね。

番宣にTikTokを使うとか初めてだったので、秘書チームで踊ったり、坂口涼太郎くんが主題歌に振りをつけて踊ってくれたり、克兄ぃ(高橋克典)と小沢(征悦)くんと曲を作ってギターで歌ったり。あれは楽しかったですね。

克典さんとは、ちゃんとお芝居するのが「沙粧妙子−最後の事件−」(1995年フジテレビ系)以来だったから、もう25年以上前? 実はめちゃくちゃ緊張してて。その緊張感があったから、後半良い感じにできたんじゃないかなと思ってます。番組で一緒にバイクツーリングしたときの話を合間にしたりとかね。克典さんはうれしいことに「今回も久しぶりにお芝居できたけど、こんなんじゃ足りないよ。もっと剛くんと芝居したい」と言ってくれてうれしいなと。僕にとっては素晴らしい先輩と若い方たちがいて、すごくいいサンドイッチをしてくれて、本当に幸せな現場でした。みんなありがとう!って感じです。


最後に、ドラマを見てくださった方へメッセージを。

みんなが応援してくれたからこんないい作品になったので、感謝しかないです。何かお返ししたいと思うけど…。これからもまたこのチームで何かできたらなって思いますね。いや、全然決まってないけど、そういう希望を持っていると楽しいじゃないですか。それが実現するには、一緒に手をつないで頑張って作品を作ってくれる方が集まってくれないと、そしてそれを応援してくれる視聴者の方がいないと作品ってできないものなので、またそういう環境に出会えることを祈りつつ、自分ができることを日々模索して努力したいと思いますね。

最高のことを言えば“新たな3部作”ができたら最高の最高の上かな。一つの挑戦だと思うけど、いろんな可能性はあると思うんです。こんなに応援してくれる方がいるから、楽しみにしてくれる方がいるから、すてきなスタッフがいるから、僕は明るい未来を思い描いてまた楽しみたい思います。
(取材・文=吉野千絵)
罠の戦争

罠の戦争

草なぎ剛主演の“戦争シリーズ”第3弾。愛する家族を傷つけられた議員秘書が知略を尽くして鮮やかなわなを仕掛け、あしき政治家を失脚させる痛快エンターテインメント。議員秘書・鷲津亨(草なぎ)は、息子が重体となった事件の真相を追いながら、その事件を隠蔽(いんぺい)しようとする国会議員へ復讐(ふくしゅう)する。

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