「NHKスぺシャル パンデミック 激動の世界」が伝える社会への視座<大越健介キャスターインタビュー>
――12月6日放送の「コロナ禍 米中 新たな“冷戦”」はどんな内容になるでしょうか。
三村:基本的に、米中対立を見ていきます。念頭においているのは、国際秩序がどう変わっていくのかということ。米中が直接しのぎを削り合う現場だけではなく、影響を受けているセルビア、香港、渦中になろうとしている台湾、日本も含めて見つめます。米ソ冷戦期のようにイデオロギーで分かれているわけではない、この世界がどうなっていくのかという現場にカメラを据え、その変化を記録します。
巨視的な観点では、大越キャスターがマハティールさんにインタビューをするなど、識者や当事者に展望していただくという形を取っています。
大越:アメリカと中国のせめぎ合いはいろんなメディアで取り上げられています。先日も米中がアジアの海で、あるいは日本の領海において、非常に緊張した状態にあるということが伝えられましたが、中国という日本の隣人が大きな力を付けているのは間違いない。
これまで唯一の超大国と呼ばれていたアメリカが危機感を持つようになり、その状況に我々はどうマネージメントするのか。米中という大国が緊張してお互いに向き合うことを必然として見ながら、具体的にどんな問題に備えなければいけないのか、融和の方に解消するという考えはあり得るのか、といったいろんな問いかけをするのが私の役割だと思っています。
そのインタビューの相手として、マレーシアのマハティール前首相、あるいは中国の「環球時報」胡錫進(コ・シャクシン)編集長、台湾の蔡英文総統のブレーンで、日本でいう内閣官房副長官をこの前まで務めていた姚人多さん、アメリカはクリントン政権時代の国防次官補グレアム・アリソンさん、そしてイアン・ブレマーさんという国際政治学者に話を聞いています。ステレオタイプの米中対立ではなくて、それぞれが抱える本音の部分を、じっくりと聞き出す作業をしている最中です。
米中がしのぎを削り、それが先鋭化していくというのは予測できたことではありますが、このパンデミックによって大きく加速した。加速した分、その後の世界にどんな風に影響を及ぼしていくのかということを、現在進行形を取材しながら、将来を展望するような番組作りに奔走しています。