まだまだ可能性が残されている。そこに挑戦していきたい
――そして、今回の新作『TOUGH PLAY』ですが、聴けば自ずと体を動かしたくなる仕上がりですが、サウンドアプローチやBPM等々、ものすごくバリエーション豊かに仕上がってますよね。
「ポップスって、日本や海外に限らず、自分たちのサウンドスタイルを割と決めて、そのままアルバム1枚を作ったりすることがあると思うんですけど、僕の場合、多彩な音楽性を持つポルノグラフィティさんが音楽の原点だったりもして。すごくたくさんなところへ行くことに抵抗がないというか、それが当たり前になっているんですよね」
――新作のテーマとして、“好き”という感覚にフォーカスしたと熊木さんがコメントされていますよね。簡単にまとめると「みんなそれぞれ好きなことは違うはずなのに、一般的な価値観や分かりやすい評価に流されてしまう。本来、“好き”はもっとパーソナルなモノであるし、それを大切にするべきだ」という。このテーマがより豊かなサウンドアプローチを生み出したところもあるんでしょうか?
「今回は好きが多様化している状態を作品でも表現しないといけないなと思って、できるだけヒントとなる音楽やアイデアの組み合わせ方もバラバラなモノをたくさん用意しようとしたので、特にバラエティー豊かになったと思っています」
――ひとつ分かりやすいモノを作った方がビジネス的観点からすれば正しい選択だったりもするじゃないですか。細分化させてしまうことに対しての怖さはありませんでしたか?
「最終的にLucky Kilimanjaroというバンドをどう消費して欲しいかと考えたとき、僕らの音楽を聴いてくれたことで、いろんな行動に出たり、いろんなことを好きになったり、そういう社会における文化的な土壌になれたら嬉しいと思っているんです。それにそぐわないことをすると、短期的に消費はされるかもしれませんが、Lucky Kilimanjaroを中心とした文化のコミュニティがキレイに作られないという感覚があって。だからこそ、これが僕らのやるべきことだなと思っています。当然、ポップに仕上げたり、バランスをとらないといけないとも考えますけど、自分たちのスタンスがブレてしまったら、より時間がかかるというか、下手したら取り戻せない可能性もありますから」
――ここ2年ぐらいで「Lucky Kilimanjaroならこうくるよな」といったように、バンドとファンの間で信頼関係が築けているんじゃないかとも感じました。そうでないと、一般的なポップスの作りではない、強烈なインパクトと中毒性を持つ「I'm NOT Dead」みたいな曲を1曲目に持ってこれないと思うんですよ。
「自信と確信があって、こういう仕上がりになったんですけど、別に変なことをしたいわけではなく、戦略的な部分というより、『こっちの方が楽しいし、面白いよね』といったところなんですよね。自分たちのスタイルをちゃんと説明しないといけないなと思って、この曲を1曲目に持ってきたんです」
――アメリカの50年代を連想させるR&B的なパートが繰り返される中、突如としてキャッチーなフレーズが飛び込んでくる面白い作りですが、他にもサンバとハウスミュージックを融合させた「踊りの合図」、エレクトロにラップをかけ合わせた「無敵」等々、日本のポップスにおける音楽の可能性を感じました。
「自分も活動していくうちに、まだまだ可能性が残されていることを感じているので、そこに挑戦していきたいと思っています」
3月30日(水)発売 2970円
収録曲●I'm NOT Dead/踊りの合図/ZUBUZUBULOVE/果てることないダンス/ぜんぶあなたのもの/無敵/週休8日/楽園/足りない夜にまかせて/無理/Headlight/人生踊れば丸儲け/プレイ
ラッキーキリマンジャロ=熊木幸丸(Vo)、山浦聖司(Ba)、ラミ(Per)、大瀧真央(Syn)、柴田昌輝(Dr)、松崎浩二(Gt)が同じ大学の軽音サークルで出会い結成。2018年にメジャーデビュー。以後、数々のフェスにも参戦。今作を引っ提げたツアー「Lucky Kilimanjaro presents. TOUR“TOUGH PLAY”」が5/28(土)からスタートする。
公式HP
http://luckykilimanjaro.net/