「ほかの医療ドラマと違う味がでていると思っています」
――オリジナル要素を付け加えるというのは難しいものなのでしょうか?
ゼロイチじゃないので、諏訪野先生がいて立石先生、冴木先生もいたりとある程度の役柄の人はいるので、さらにこういう人たちがいたらいいよねという感じで、藤森さん、狩山監督たちとブレストして作っていきました。産みの苦しみというよりも(オリジナル部分を考えるのは)逆に楽しい作業です。
――今期は他局でも医療ドラマがある中、手術シーンなどに特化しない、癒やされるような物語が本作の魅力です。
今期はそろいましたね。医療ドラマっていろんなパターン、形があると思うんですけど、まずこの「祈りのカルテ」は各科を毎話事に回っていく、今までにあまり見たことがないパターン。「ブラックジャックによろしく」(2003年TBS)は外科や小児科を何話かに渡っていったと思うんですけど、毎回科が変わるのはまずないのと、そのたびに指導医の先生が出てくるというのも通常の医療ドラマと違う点です。
お医者さんも普通の人間で、みんながみんな天才的な手術テクニックで、成功率が低い難病を治してしまうわけではなく、誰もが悩んだり苦しんだりしながら、我々と同じように日々仕事と向き合ってる。それをきちんと描ければいいなと思っています。
ほかの医療ドラマと差別化というわけではないですけど、指導医の先生たちもスーパードクターというわけではなく、みんな普通の人。ただ毎回さまざまな科に行くということで、実際にいろいろな先生に取材させていただいたんですけど、みんな話を聞くとですね、みんなちょっと変わっているんです。ちょっと変。でもすごくみんな人間らしい(笑)。それが全員の指導医のキャラクターに生かせられるよう、こだわりましたね。
だからとにかく普通のお医者さんの日常の話をしようと。そこにミステリーというか、〇〇のオペで××を摘出しなければ△△してしまうみたいなことではなく、何でこの患者さんは入院を長くしたがるのかな?何で薬を飲みたらがないのかな?といった割と身近――本当の病院でもよくあることをミステリーにすることで、原作の知念先生のお力だと思うんですけど、ほかの医療ドラマと違う味がでていると思っています。
「(玉森は)非常に透明感のある美しさ」
――実際、本編が絶賛放送中ですが、玉森さんの演技をご覧になっていかがでしたか?
いやあ~、想像を遥かに超えていましたね。素晴らしいなと思いました。諏訪野って、とても難しい役なんですよ。明るく前向きなのに、空気を読み、人の顔色をうかがうというちょっとマイナス面がある。それなのにおどおどしているわけではない。ミスマッチというか、食い合わせが悪いものすごく微妙なキャラを見事に体現していただいてます。
人の顔色をうかがうパターンってどうしても陰キャなイメージになっちゃうんですが、原作の諏訪野がそういう感じじゃないのと、玉森さんにそういうキャラが合わない。一方で、推理シーンで、普段は普通の人なんですけど、どこかキャラを超越して大きくジャンプして飛び越えなきゃいけない。言っちゃえば、その時だけは人ならざるものにならなければならない。その難しいキャラを見事に演じてくださっているのに感動しました。間違いなく玉森さんにしかできないと思います。
――実際に、玉森と会ったときのエピソードをお願いします。
先日現場に行かせていただいて、ちょっとだけですがお話しさせていただきました。非常に透明感のある美しさ。その美しさで、立っているだけで注目を集めてしまうのに、役に入ると見事にさえない研修医になれるというのがまたすごいなと思いました。
――ほかの出演者の皆さんの演技などの感想も教えてください。
本当に研修医役の皆さんのアンサンブルが素晴らしいですよね。研修医のシーンて、本線にまったく関係ないことだったり、ミステリーの補強だったり、彼らのキャラを出す事だったり、いろんな役割があるんですね。だからきっと「何だよこれ」みたいな演じにくい部分も多々あると思うんです。それを皆さんが解釈して、すてきに演じてくださって、本当に感謝しています。
また、松雪(泰子)さん、椎名(桔平)さんという存在感のあるお二人に、コメディシーンやシリアスなシーンを演じていただき、これはもう率直に感動しています。ホント佇まいがカッコいいんですよねえ、二人とも。