自分に気づく瞬間だったのかなと思って演じていました
――第40回の最後のシーンで、一人ですごろくをするシーンがありましたが、どういう気持ちで演じましたか?
実はあのシーンは、決定稿が上がった後に三谷さんがもう一回直したいと言って、元々もらった台本とは少し違う形になりました。その直しが僕も好みで、最初の台本では、もっと義時が和田合戦を起こすように仕向けていく感じでした。新しく上がってきた台本では、畠山重忠の乱の時のような終わり方になっていて、義時の中では矛を収めたのに和田軍が動いてしまった、畠山重忠の時も重忠は矛を収めるために鎌倉に来たのに我々が先走って戦を始めてしまったという、今度は義時が畠山の立場になるというのが面白いなと思って演じました。
和田を倒した方がいいと思っているのか、逆に戦をしなくて済んでホッとしてすごろくをしているのか、最後の最後まで悩んだシーンでもあります。執権・義時としてはやらなければいけない戦だと思っているけれども、小四郎・義時としては和田と戦わなくて済んだということはとてもホッとしたことだと思います。だから、実は物凄くホッとしている自分に気づく瞬間だったのかなと思って演じていました。
本当にベストなキャスティングだなと思います
――後鳥羽上皇を演じる尾上松也さんの演技はいかがですか。また、義時は後鳥羽上皇をどのように思っていたと思いますか?
同世代の中で歌舞伎をやられている方たちは、時代物をやった時に自分たちには出せない色気や声音など本当にいろいろな技術を持っているなと思います。松也くんの後鳥羽上皇のいやらしい品みたいなものは抜群だなと感じましたし、西の雅な雰囲気を感じさせてくれるせりふ回しで、本当にベストなキャスティングだなと思います。
義時からすると、後鳥羽上皇は見えにくい存在で常に謎の存在です。確実に武士のことを下に見ているだろうということを後白河法皇の頃からずっと感じていて、そういう感覚に怒りや悲しみ、何でこんなに偉そうなんだろうという思いをずっと感じてきました。時代が時代なので、敬わなければいけない存在というのはもちろんある中で、口ではこう言っているけど心の中はものすごくメラメラしているという瞬間は常にあって、不思議な時代だなと感じていました。