ラブシーンも含め、安心して撮影できる環境づくりを徹底
――それでは、鍵谷を演じる佐藤さんのキャスティング理由は?
田中P:鍵谷のビジュアルって、前髪で顔が隠れているけれど、実はちょっとした表情がすごくかっこいいという部分が重要だと思っていて。誰か良い人がいないかと話し合っている中で「佐藤さんがいいんじゃないか」という意見が出たんです。
佐藤さんはパフォーマーとしてキラキラ輝いている印象があったのですが、ふとした瞬間の素の表情みたいなものが、原作の鍵谷がもつ印象に近いものがあるなと感じて、一回ご相談に行こうという話になりました。
面白いなと思ったのが、衣装合わせのタイミングでは他のお仕事の都合で佐藤さんが金髪でいらっしゃって、何を着せても“これは鍵谷じゃない…これは佐藤さんだ!”となっていたんです。でも後日黒髪で同じ衣装を着ていただいたら“まぎれもなく鍵谷だ…”と。原作者の板倉さんも現場で「鍵谷だ!」と驚いていました。
――佐藤さんは撮影直前まで原作を見て細かな動きもこだわったとお話されていましたが、現場での様子はいかがでしたか?
田中P:俳優という職業に対して真摯(しんし)に向き合っているなと思います。すごく勉強熱心ですし、監督ともしっかりとコミュニケーションを取りながら撮影を進めていて、こんなに真面目で良い人いるのか?と思うくらいで。
もちろんアーティストとしての活動もそうですが、これから俳優としてのお仕事もいろんな経験を積んで、伸びていかれる方なんだろうなと思います。
岩上P:佐藤さんご自身がインタビューでお話されていたのですが、鍵谷という役は普段の佐藤さんと真逆な性格ということで、どうすれば鍵谷のように見えるかを考え、現場に入った瞬間から表でも裏でも自分が持つ鍵谷のイメージを常に崩さないように過ごしていました。
そして、控室に戻ると原作を読み返し、本当に細かく見ていらっしゃいました。かつ、鍵谷というキャラクター自体をすごく愛していらっしゃって。映像を見る方にも鍵谷というキャラクターを愛してもらいたいということを真剣に考えて演じられていた印象です。
――ラブシーンを撮影する上で気を付けていたことはありますか?
田中P:まい子にとって、セックスをするということは、彼女が抱える課題だし、彼女が一つ乗り越えた上での行為というか、そこに対する尊さはちゃんと表現したいと思っていました。
セックスという行為自体を見せるというよりも、まい子が課題を一つ乗り越える過程と、その結果の尊さを描きたいと思っていたので、ドラマ化にあたって性描写のところを不自然に省くことはできないなと。
原作者の板倉さんとも最初にディスカッションさせていただいたときに「ドラマだからその表現ができなくて、セックスのシーンが始まったと思ったらすぐに朝、という展開は不本意」というお話があったんです。
監督の坂下(雄一郎)さんも枝(優花)さんも、こちら側の意図を丁寧に汲み取ってくださる方々なので信頼してお任せできましたし、インティマシーコーディネーターの西山(ももこ)さんにも参加いただけたので、みんなが安心して撮影できる環境づくりも徹底しました。