野心はありそうでないんです(笑)
――2020年には東京五輪が開催されます。外国人からも注目されている日本の物の一つに落語があると思うんですが、海外公演をされてお客さんの反応はいかがでしたか?
字幕でやったんですが、笑いどころとかは日本人と一緒ですよ。細かいことをいうと、風俗とか生活スタイルだとか、小物だとかは日本人と外国人で違うので、落語を聞く上で「これだけは知っておかなきゃいけない」ということは説明しておきますけど、そこだけクリアすれば大丈夫ですね。ネタによっては、日本人より笑ってくれる時もありますしね。親子の話とか、夫婦げんかして焼きもちを焼いた話だとか、欲を張った人の話とか。そういう人間の感情とか欲望とかは世界各国変わりないので、それを題材にしたネタをやれば変わりないですね。
――寄席とか落語会にも外国人は、いらっしゃっていますか?
日本語が分かる方はいらっしゃいます。そんなにいっぱいじゃないですけどね。でも寄席なんかは外観とか、中を見るだけでも外国の方は喜んでくれると思いますね。日本人もブロードウェーとかオフブロードウェーとかに行くと、言葉がよく分かんなくてもコメディアンを見に行く人っているじゃないですか。それと同じ感覚ですかね。紙切りとか、マジックとか、曲芸とか、目で見て面白い芸もありますから。一人だけ通訳さんを雇ったら、同時通訳とかでできるかもしれませんね。
――普段の落語の他、ヨーロッパ公演やPS4のエレクトロ落語、CM出演とお忙しいですが、今後の落語界に対する野心はありますか? 同じ伝統芸能である歌舞伎界でも、いろいろと役者さんたちが新たな試みをやられているんですが…。
野心? 僕、ありそうでないんですよ。ありそうに見えます(笑) !? オファーが来たら、やるっていうだけです(笑)。PS4は、よくあんなにうまくはまりましたよね。「僕、偉いな」と思いましたね。僕が音楽に合わせるんですよ(笑)。普通、逆だと思いませんか? あのテクノみたいな音楽に、僕に合わせているんです! あれをやり終えた時は、「いい仕事をしたな」と思いました。着ぐるみを着た人がいて、僕が振りを付けたんです。僕は声だけ。よく出来たCMでした。
落語が注目を浴びている上での取っ掛かりとして、多分、僕なんかは使いやすいんですよね。それでいいと思うんです。そういうのに取り上げていただいて。例えばCMを見て、「落語家ってこういうことできるんだ」みたいに思ってくれて、「じゃあ、寄席に行ってみよう!」ってなってもらえれば。
その前に、テレビだったら家で見られますから、こういう番組に興味を持っていただいて、落語に興味を持つ入口になればいいかなと思います。野心があったら、たぶん落語家になっていなかったと思いますね。他の仕事をしていたと思います(笑)。
7月31日、8月7日、21日、28日の夜11:00-11:30にNHK Eテレにて放送