倫子に秘密を打ち明けるも浮かない表情の家治
倫子は、家治から打ち明けられた秘密を思い出し、どうしたらいいのかと悩んでいた。家治のために何かできることはないかと試行錯誤を繰り返している様子。
その一方で、家治も浮かない顔をしていた。体調を崩していたこともあったが、その表情はいつも以上に悲しみにあふれていた。家治は、将軍家の血を引かない自分の子どもを将軍に据えてよいものかと考えていたのだ。
倫子に自分の秘密を言えたことで、少しは楽になったのかと思われたが、思った以上に、「将軍家の血筋ではないこと」が家治の心をむしばんでいたように思う。
どう転んでも悲劇を生んでしまう。そのことを家治は分かっていた。だからこそ、簡単に動くことができないし、すぐに判断することもできない。家治は、一人で抱え込もうとしていた。
家治を引き上げる倫子の言葉
そんな中、倫子の元に定信からの文が届く。そこには、江戸の町に、家治にそっくりな歌舞伎役者を見掛けたと書かれていた。さらに、血のつながりを感じずにはいられないほどに似ていたとも記されていた。
倫子は文に添えられていた「市村幸治郎」の歌舞伎絵(役者絵)を持ち、家治の元へと向かう。体調を崩していた家治を心配しながらも、定信から送られてきた歌舞伎絵を見せる。倫子は定信が見たという幸治郎のことを伝える。しかし、家治はたんなる偶然であろうと、倫子から目を背ける。
倫子が気にならないのですかと問うが、家治はこれ以上何かを知って何になるとどこか諦めモード。家治は、真実を知るのが怖い様子だった。あまりに悲しそうな表情を浮かべる家治を見て、倫子に背中を押してあげてと願った視聴者もいただろう。
その願いが届いたかのように、倫子は言葉で家治を引き上げる。倫子は家治に、これまで家治が抱えてきた苦悩を考えると胸が痛むと告げる。また、倫子は血筋とはそんなに大事なことなのでしょうかと投げ掛ける。
それまで倫子を見ずに、歩みを進めていた家治は立ち止まる。倫子は、幼い頃から勉学に励み、誰よりも国のことを思っている家治は間違いなく将軍の器にふさわしいと力強く伝える。さらに、倫子は家治の手を包み込み、私の夫は第十代将軍徳川家治さまですとほほ笑んだ。
うそ偽りのない倫子の言葉から伝わるように、倫子は家治という一人の人間を愛していた。孤独な戦いを続けていた家治を倫子の愛が救った貴重なシーンとなった。