映像不可能といわれた傑作ミステリー『十角館の殺人』、ドラマを盛り上げる3つのポイントについて考察
ミステリ研究会だからこその推理に注目!!
本作に登場する大半がミステリ研究会のメンバーである。ゆえに、島パートでは離島での連続殺人に阿鼻叫喚するただの学生たちという設定とは違い、当事者たちが恐怖の最中どこかでこの事件を楽しんでいる様も見られた。各々が犯人を推理し、自分ならではの真相もとい仮説を口にする。ミス研のメンバーたちは、被害者であると同時に「探偵」の役割も担っているのだ。そして、無駄に説得力を出してしまう。それは本土の江南と島田もまた然り。
そしてミステリー作品の醍醐味と言えば、我々受け手(視聴者)が映像や文章を基にその事件を共に推理していくことではないだろうか。大抵のミステリー作品では謎解きの視点はただ1つ。その1つの視点を基に、我々は推理していく。だが本作は、この謎解きの視点が複数存在してくる。つまり、その分我々視聴者は惑わされ、混乱し、さまざまなルートを歩んでいた気でいるが、実は無意識のうちに敷かれたレールの上をただ歩かされてしまう。さて、あなたはこの先入観と言う名のレールから外れて、フラットかつ広い視点からこの事件を解明することができるだろうか。
映像化不可と言われていただけあり、新感覚のミステリードラマ。ぜひ、このゾクゾクした面白さを体験しながら、共に「謎解き」役を担ってほしい。
文=戸塚安友奈