苦しかった機能性発声障害を乗り越えて。今、作詞するならそのときの体験を
――「今すぐKiss Me」もですが、初期は提供曲。そのあと渡瀬さんの作詞曲に移っていったのは、そういうファンたちに向けて、リンドバーグのカラーを自分で発信したいと思ったからですか?
それはそうなんですけど、作詞自体はアイドル時代からずっとしていたんですよ。でも、全く採用されなかったというのが現実です。プロの作詞家が書くものはやはりすごく洗練されていたし、すごくキャッチーだし。私はそういう手法をなにも知らずにノートに気持ちを書くだけでしたから。なるほどね、と。だけど、達也(平川達也[ギター])にそのノートを見せて、彼がメロディーを付けてくれた初めての曲「MINE」が1stアルバムに収録されて、その後も1曲、2曲しかない私の歌詞をすごく良いと言ってくださるファンがいてくれたから、ものすごく燃えていましたね。書きたいこともいっぱいあったし、伝えたいこともたくさんあったから。
――そういう渡瀬さんの歌詞だからか、リンドバーグには身近なバンドという印象を受けます。テーマはどう見つけて書かれているのですか?
色々な書き方があるので一概には言えませんけど、当時すごく意識していたことで言うなら、たとえどんなに悲しい歌詞であっても、最後には絶対救ってあげる。それはプロデューサーからもつねに言われていましたね。「これで終わるんではなくて、最後は救おうよ」って。だから聴いてくれる人が必ず立ち上がれるように、前向きな歌詞、救ってあげる曲。そこに当てはまる、そのときそのときの想いがテーマなんだと思います。
――今だとどんなことに対しての想いが強いですか?
もし今新しい曲を書くなら、どんなことを書くやろうなって。私、いつもそういう風に考えるんですよね。1つ思うのは、数年前に発症した機能性発声障害のこと。あのときせっかく復活したリンドバーグを休止して、本当に身も心もボロボロになってしまって。そこからようやくここまで元気になりました。だから、今書くならやっぱりこのときのことを書くやろうなあ…。生きているとそこら中に石ころが転がっていて、誰もが絶対つまずくときがあると思う。そんなとき、時間はかかっても絶対に立ち上がれるんだって伝えたい。だって、私自身がそうだったから。
35周年ツアーは胸アツなセットリストを予告。あの曲は何位に入る?
――今年でメジャーデビュー35周年。長く愛されるバンドになりましたが、これからのリンドバーグの音楽で伝えたいことはどんなことでしょう?
歳は重ねましたけど、相変わらず私たちのテーマは「前向き。」で、これはこれからも根底にあり続ける言葉です。最近もファンレターをいただきますが、昔からのファンの子がお母さん、お父さんになっているんですよね。その人たちの声を聞いていると、リンドバーグの音楽がいつもそばにいて、いつも支えてくれていたって。そういう存在になれていたことが分かるんです。
音楽という形で人の人生に関われたって、すごく素晴らしいこと。だから、これからもそういう存在であり続けたい。ファンの人たちと一緒にリンドバーグの音楽を育て続けないとっていう思いが強くありますね。
――リンドバーグは仲違いのような話もありませんね。
全然ないです。むしろ今、一番結束力がありますよ。なんていうのか、私たちももう人生折り返していて、明日どうなるか分からない。もしかしたら今日のライブが最後かもしれへんって。最近は悲しいニュースも多いから、特にそんな気持ちが強いです。若いときにこんな気持ち、湧きませんでした。昔のファンで今は聴かなくなったという人も、またライブに来てほしいです。今のリンドバーグは本当にすごいステージを見せられるから。
――4月19日から35周年ツアーが始まります。今回はどんなセットリストで迎えようと考えていますか?
今回は「私の背中を押してくれた曲」というテーマでリクエストを受け付けて、その順番でセットリストを考えています。もうすぐ集計が終わるので(取材時)、どんな曲が出てくるか楽しみです。下から順番にやっていくつもりなので、さあ、1位の曲はなんでしょう? 絶対胸アツなセットリストになりますよ。
――ちなみに渡瀬さんが一番好きな曲というと?
この質問は本当に答えられないんですよ。だって、どれも自分の大切な子どもたちだから。
――ライブで歌っていて気持ちがいい曲というのではどうですか? ファンの方でもライブだから聴きたい曲があります。
それでも難しいなあ。けど、気持ちがすごく入るのは「GANBAらなくちゃね」「Over The Top」とか。けっこう熱くなって歌っていますね。
――どちらも人気曲なので、それもセットリストに入ってきそうですね。
いやいや、分からないですよ。以前ファンの人からのリクエストライブをやったときに、「今すぐKiss Me」が入ってこなかったから。そのときMCで言ったんですよ。みんなのリクエストでセットリストを作ったけど、帰りの道で「あれ? 今日あの曲なかったな」っていうのが絶対あるからねって。多分、「今すぐKiss Me」は絶対入るから、自分は違う曲にしておこうって。そうしたらなかったっていうね。そんなことがあるかもしれませんね、また(笑)。
取材・文:鈴木康道
Debut 35th Anniversary Tour「Thanx a Million☆」
2024年4月19日(金)/会場:大阪BIGCAT
2024年4月21日(日)/会場:名古屋ダイアモンドホール
2024年4月28日(日)/会場:EX THEATER ROPPONGI
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■渡瀬マキ公式サイト
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