棚橋弘至、安田顕のあの作品も! 映画アドバイザー・ミヤザキタケルが厳選した9月初放送映画3作品<ザテレビジョンシネマ部>
『パパはわるものチャンピオン』(2018)
新日本プロレスのレスラー、棚橋弘至の主演作。作・板橋雅弘、絵・吉田尚令による人気絵本が原作で、ヒーローでいたいけど、悪役を強いられるプロレスラーの父親を棚橋、そんな父親のことを恥じる息子を寺田心、2人を見守るレスラーの妻を木村佳乃が演じる。厳しい現実にもがき苦しみながらも前を向いていく親子の姿を通し、表面的な部分だけでは推し量ることのできない人の心の強さを描写した人間ドラマです。
一切プロレスに興味を持たない人にとっては、気に留めることもなく通り過ぎていく作品なのかもしれないが、怪我が原因でエースから格下のマスクマンに成り下がった男とその息子の姿を捉えた家族の話であり、思い描いた夢と思い通りにならない現実の狭間でどう生きていくのかを描いた話でもある。つまり、誰にだって当てはまる話なのだ。
良くも悪くも社会のことわりに染まり、不純で言い訳や折り合いばかりつけている大人。良くも悪くも社会のことわりを無視し、純粋で傲慢でありのままな子ども。そんな作中の親子の対比から、今の自分とかつての自分とのギャップを垣間見る。どこで間違えたのか、今からでも引き返せるのか、最早手遅れなのか、己自身を見つめ直す時間になると思う。現状が自分の本意でない人なんて世の中にたくさんいる。かと言って、今の自分を選んだのは、他の誰でもない自分自身。これから歩む道がどうなるかは、今この瞬間をどう生きていくかで決まっていく。たとえ何かに負けたとしても、人生において負けたわけじゃない。心持ち次第で状況はいかようにも変わっていく。悪役マスクマンとして戦う父の姿が、そんな父の葛藤や決意を受け入れていく息子の姿が、本当に大切なことは何なのかを教えてくれると思います。
国・愛・己と向き合い、今の自分を見つめ直すキッカケを与えてくれる3本の作品とともに今月も素敵なWOWOWライフをお過ごしください。
文=ミヤザキタケル
長野県出身。1986年生まれ。映画アドバイザーとして、映画サイトへの寄稿・ラジオ・web番組・イベントなどに多数出演。『GO』『ファイト・クラブ』『男はつらいよ』とウディ・アレン作品がバイブル。