自分の中での普通と相手が思う普通の違いの差が大きいだけ
――見てる方も「本棚が理由!?」って思う方も多いと思います。
そうですね。大多数の意見は「(殺害理由が)そうじゃないだろう」と思うだろうけど、それは仁藤に対しての勝手なイメージかもしれなくて…。
その人に対しての印象のちぐはぐ具合がこの作品の面白い部分かなと。「あー、自分って結構人とか物とか事柄を簡潔にしすぎていたのかもしれない」と思いましたね。
――そんな、仁藤俊美という人物をどういう人だと理解しましたか?
仁藤の言葉通りの人物だと思うようにしました。裏があるわけでもなく、彼の中で裏も表も多分表で。
例えば、微笑んだ感じや、柔らかい雰囲気が好印象を人に与えていたら、殺したときにその人に対して「いや、そんなわけない」「何か理由がある」と思ってしまう。
しかし、彼の中では両方(好印象な部分も猟奇的な部分も)表なんだ、という思いを持つようにして、現場に臨もうと思いました。
――そういう仁藤の人間性は理解できますか?
あるだろうなとは思います。最近のニュースを見ていても、僕らからすると「いや、おかしいじゃん」って思うことも多いと思うんです。
そう思うことは簡単だけど、その人にとっては“おかしい”ことではなくて普通のこと。かつ、自分自身も相手から“おかしい”と思われる可能性もある。なので誰でも、仁藤になりうる可能性があると思います。
仁藤については、自分の中での普通と相手が思う普通の違いの差が、大きかっただけかなと思います。
自分の価値観や物事のものさしは人それぞれ違うし、違うことで不安になると自分の気持ちが楽になる方に持っていきたくなるし、それが簡単だけど、“そうじゃない”というのを仁藤を通して改めてこの作品で実感したような気がします。
この作品を通して、印象だけで片付けられないことってたくさんあるなって思うし、改めて物事をそしゃくする時間は大切だと感じました。