日活ロマンポルノ製作開始45周年記念「ロマンポルノリブートプロジェクト」の一環として、「ザッツ・ロマンポルノ 女神たちの微笑み」を初ブルーレイ化し、10月4日に発売された。
'71年の初公開以来、'88年まで約1000本を超える「ロマンポルノ」全作品から、女優を中心に選別し、あらためて編まれたロマンポルノ「官能アンソロジー」。時代とともに愛されたエロスの女神による貴重な官能名シーンの数々が収録されている。
また、音声特典として、特別コメンタリー「みうらじゅんの『わが愛しのロマンポルノ!』」を収録。コメンタリー収録を終えたみうらに話を聞いた。
――オーディオコメンタリーの収録を終えた今の心境は?
「ザッツ・ロマンポルノ女神たちの微笑み」は初見でした。紹介されてる作品の中には初見のものもありましたが、思い出深いのもたくさん入ってましたね。もう40年以上前の記憶ですが(笑)。
僕は高校の中間テストや期末テストが終わると、必ず自分への“ご褒美”としてポルノ映画に行ってましたからね。平日の昼間、ガラガラの映画館にポツンポツンとおっさんが座ってて。
まだかわいい坊やだったからさ、僕の体を触りにくるの。それが怖くてね(笑)。ドキドキしながら見てました。そちらの発展場でもあったんでしょう。
――最初にご覧になったのは?
「生贄夫人」でしたね。3本立ての1本が。入ったらいきなり「生贄夫人」をやってて。SMって物は知ってたけど、最後は浣腸だからね。もう衝撃を受けちゃって。
その後もいろいろな作品を見たけど、どこか物足りないんだよね。出だしでこれ食らってる人間って、やっぱり人生変わるんですよ。全ジャンルのポルノが好きな人っていないと思うからね。
でも、当時は3本立てだから。苦手な物もごっちゃに入ってる。今は「ふんどし祭り」通過しなくても大人になれるけど、俺らは「色情海女 ふんどし祭り」を通過して大人になってるから(笑)。
ジャンルは広いんですよ。いろいろなところからエロを抽出できる才能を植え付けられた。童貞のときに全くリアリティーのない世界を見せられてるからね。だから、今でもいろいろ喋れる。いろいろなジャンルの処方箋をいただいているので。
――やっぱりこの日活ロマンポルノはすごかったなというのは?
日活といったら、やっぱり僕はSM物なんですよ。他の映画会社でもいろいろ作ってたけど、SMっていうジャンルをよりポップにしたのは日活の功績だと思いますよ。それに大罪ですよ(笑)。
――みうらさんが好きな監督は?
うーん、西村昭五郎監督ですかね。文芸的なにおいがして、後に評価が上がったり、女子に受けたりしてる作品もあると思いますが、やっぱり童貞的には文芸なんて縁遠くてね。ストレートな調教物にグッときてました。
――女優さんでは谷ナオミさんのファンだとか。
そうですね。SMといえば谷さんですからね。あとは飛鳥裕子さんとか、麻吹淳子さんとか。「生贄夫人」は違うけど、団鬼六さんシリーズがいいですね。今でもたまに見てますから。日活の女優さんは、みんな演技がうまいですよね。
AVが出てきて本番時代になったけど、ロマンってきっと疑似の意味だと思うから、隠してやらしいほうが好きな世代っていうか。もろ見えはね、やっぱり嫌なんですよ。日本のエロは恥ずかしの文化だから。
AVの登場には日活ロマンポルノもやられたけど、でも疑似でやってるすごさっていうのはあると思うんですよね。素人じゃなく女優にこだわりがあります。
――恥ずかしの文化ですか。
美保純さんの「ピンクのカーテン」からゴロっと変わったんじゃないですかね。女の人が「勃ってる、勃ってる」っていうような時代になった。ただ、昔は逆に「ふんどし祭り」みたいなはじけ過ぎの文化もあったんだけどね。
今、町にポルノのポスター貼れないでしょ。昔は「生贄夫人」ですら貼ってあったよ。俺、夜中に剥がしにいって、いまだに持ってますからね。日活ロマンポルノの頃はある意味ファンタジーですから。
「東京エマニエル夫人」とか、日活ロマンポルノはファンタジー巨編として見るべきだと思います。昔の怪獣映画みたいな、あの感じ。時代背景も、もう二度と呼び戻しはできない世界観だと思いますね。
――今回のパッケージはいろいろな引き出しがあって楽しめますね。
ここははっきり断っときますけど。抜けない、抜けるわけない。“抜くんじゃない、感じるんだ”みたいな。ブルース・リー的なのが今の日活ロマンポルノを見るこつです。
あの時代特有の言いようのないセンスが映像にあるんですよ。文化なんですよ。そういう不思議なエロを、僕らの時代は普通に見られた。今の人は最初から不思議な物だと思って見るんでしょうが。あと、今はインサートの時代だけど、日活ロマンポルノはエロ含蓄の方ね。脳がピリピリするような妄想がいっぱいだから。
――やはり思い入れが強いようですね。
思い入れというか、大切な思い出ですよね。セックスをまだしてなかったですからね。エロって。ロマンって、妄想って、童貞の財産だと思います。
――ただ、これだけ今も人気があるというのは、大人になったからこそ分かることもあるんでしょうか?
それはいっぱいあると思いますよ。もう1回聞き直してみると違うことを思う。今の人は次々と新しい物にいっちゃうけど、見返すとまた違う感想を持ちますね。このパッケージがその入口になったらいいですよね。
何年の作品でとか、そういうデータはどうでもいいんですよ。データじゃなくて、自分の記憶。ここで勃ってたなとか。それはね、本当の自分探しですよ(笑)。年取って自伝とか書く人がいるけど、僕の場合はロマンポルノを見直さないと書けないですよ。もう1回自分の性と向き合わなきゃね。
――AVにうんざりしている世代にも日活ロマンポルノがいいのでは?
僕くらいの年代になったら、もう射精とかどうでもいいし。カウパー止まりでOKになります。気持ちよかったらいいわけだから、エロって。カウパーが出てるくらいで止めといた方が、健康にも絶対にいいんじゃないでしょうか。
オナニーだってもう射精しなくていいですよ。勃ち上がれ、70年代、童貞こじらせ男子。カウパーでいいじゃないかってキャッチコピー入れといて下さい(笑)。
発売中
キャスト=白川和子/小川節子/田中真理/片桐夕子/宮下順子/谷ナオミ/宮井えりな/原悦子/小川亜佐美/風祭ゆき/泉じゅん/朝比奈順子/関根恵子/五月みどり/美保純/志麻いづみ/早乙女愛/真咲乱、ほか
構成・監督=児玉高志
ナレーター=林美雄
<特典>
・音声特典=みうらじゅんの「わが愛しのロマンポルノ!」
・オリジナル劇場予告篇
・フォトギャラリー
・成人映画雑誌「EIGA NO TOMO」から当時の関連紙面を復刻データ収録
価格=4200円(税抜)
発売元=日活
販売元=ハピネット
(C)1988 日活株式会社