「遺留メモ」連載最終回は特別版!
WEBザテレビジョンでは、毎週木曜のドラマ放送日の掲載で、連載企画「遺留メモ」を展開中。最終回は10周年記念として、連ドラ&スペシャル版を含め思い出に残っている名場面や糸村の魅力について本人の口からあらためて語ってもらった。
――これまでの10年を振り返って、糸村にとって一番大きな出来事は?
すぐに思い浮かぶのは「第2シーズン」での長瀬(田中哲司)さんの殉職。唯一、普段の糸村ではいられなくなってしまった瞬間でした。
仲間が凶弾に倒れた時の、あえて言葉を選ばず申し上げるならばどこか取り乱したような様子。あんな糸村は、あれ以前も以降も見ることができていないんです。
一昨年のスペシャル版(第9弾・2019年12月1日放送)で、村木(甲本雅裕)さんが同じような状況に陥った時でも糸村は長瀬さんの時ほどには情感を露わにしていなかったんです。それは、長瀬さんのエピソードがあったからこそなんだと思います。
二度とあのような思いはしたくないから村木さんのピンチをまた違った形で受け止める糸村がそこにいた。2つのエピソードは完全にリンクしているという意味で、長瀬さんの死は糸村にとって大きな出来事だったのでしょう。
――ゲストが演じる人物たちも個性豊か。一番印象に残っているキャラは?
内藤(剛志)さんとご一緒させていただいたスペシャル(第3弾・2014年放送)は印象に残っています。内藤さんが演じてくださった叩き上げの刑事とのお芝居は、対峙(たいじ)していても胸に迫るものがありました。
何よりも糸村が自分の過去を初めて、そして唯一語っている貴重な回なんです。そういう思いに駆られる関係性を作れたということも相まって、糸村にとってとても大きくて忘れられない人物になっていると思います。
――あらためてお聞きしますが、糸村の“愛おしい”ところはどこですか?
役者が自分の演じている役に対する思いを語ることって“禁忌”かなと思ったりもしますが、どこなんでしょう……。今の特対室では「あぁ、あいつは何を言っても聞きはしないよ」と、糸村自身が周りから諦められている存在になっている。それはとても面白いと感じているのですが、そこに至るまでは捜査一課の時も月島中央署にいる時も今以上に鼻つまみものとして扱われていた時期がありました。
でも、糸村が変わらないところは、どこにいてもどんな時も同僚のことが好きだということ。村木さんを含めて、常に自分の周りにいる人たちのことを大事に思っているんです。そうした糸村のある意味“片思い”的な配慮や相対し方は愛おしく思います。
◆取材・文=月山武桜