大江千里のNY音楽ライフエッセイ第3弾刊行!父親との葛藤やコロナワクチン接種まで目の前のリアルをつづる
――収録されたエピソードでは、引っ越しのことも印象的でした。
大江:あ~。次から次に人生にトラブルが起こって(笑)。大家のジョーとは10年彼の物件に住んでいて、友人としても付き合っていて、もちろんその間にいろんな本音をぶつけ合う口論もあって、やっとそれを乗り越えて新しい次元にたどりついていた。そんな彼が子どもができるから今いる場所から引っ越してほしいと言ってきたんです。
引っ越すかどうかは最後は僕が決定することなので、引っ越さなくてもいいのかもしれないけど、何かを書いたり作ったりしている人間としては、一つの場所に居過ぎた感じもあったんですね。もしかしたら今はこうやって誰かの理由によってでも無理やり部屋を移ったりすると、何かが生まれてくるきっかけになるかもしれない。実際自分マターじゃない引っ越しだったにも関わらず、今の部屋に引っ越してから、ものすごくたくさんの曲のかけらを書いていますからね。
――以前は引っ越しを頻繁にしていたそうですね。
大江:3年居れば長い方で、こんなに10年ひとつの場所に暮らすようなことはなかったですね。縁があったのですね。
――長く暮らされたのは、環境が音楽活動に適していたから、ということでしょうか。
大江:近くにカトリックの教会がありましてね。僕は小さい頃にカトリックの洗礼を受け、毎週日曜学校に行ってキリスト教の教えを学んでいました。幼少期は、イエス・キリストが欠かせない存在で、教会にいつも守られているような感覚がありました。そうした意味付けをあの場所に当てはめていたのかもしれません。すごく守られているような気がしていました。
アメリカの社会の中で何かアクションを起こすとそれが比較的いい感じでリアクションを起こし、それがまた次のチャンスへとつながっていく。僕の10年間はなかなかありえないほどのラックをこの場所で受けていたような気がするのです。
その場所を離れるとその今までのラックを失ってしまわないだろうか、という気持ちもありました。けど、手放す・手放さないっていうことよりも、風を起こそう、次へ向かおうって思えたんですね。
そこから僕もぴーすも、嵐の海に放り出されるように今のところにバタバタとやって来まして。最初の2週間は、アンラッキーにも事故でガスが止まってしまい、カセットコンロで毎晩鍋という一人キャンプ生活。それこそ大陸横断をした時に砂漠の真ん中の小さなモーテルに泊まっていたあの感覚にまた戻ったような感じでした。
「マンハッタンに陽はまた昇る 60歳から始まる青春グラフィティ」
発行:KADOKAWA
定価:1,800円+税
発売日:2021年3月31日(水)
https://www.kadokawa.co.jp/product/322008000049/
大江千里作・告知動画 https://youtu.be/mFmug-ozBko
◆大江千里出演の特別番組◆
震災10年特別企画「音楽で心をひとつに Music for Tomorrow」
https://thetv.jp/program/0001000185/
2021年3月27日(土)夜11:00‐0:00 NHK総合にて放送
オーダーメイドファクトリー
大江千里『Senri PremiumIII~MY GLORY DAYS 1993-1999』
・大江千里のアルバム『Giant Steps』『SENRI HAPPY』『ROOM802』に未収録シングル 曲を加えたCD‐BOXがリリース。予約受付中(2021年5月18日まで)
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