浦沢直樹 インタビュー
――「漫勉」シリーズは2014年から続く人気番組ですが、そもそも番組が開始したきっかけを教えてください。
僕は5歳ぐらいからずっと“描く側”にいたのですが、漫画が完成されていく過程の面白さを幼いときから感じていたんです。ですが、読者は出来上がったものしか見ていない。それが読者と描き手の間に深い溝を作っているんじゃないか、というジレンマをずっと感じていました。
この話を放送作家の倉本美津留さんと食事しながらしていたのですが、僕らが(漫画を描いている時に)見ている画面を(視聴者にも)見てもらうことで、読者の漫画に対する認識が変わるんじゃないか、ということになり、徐々に「漫勉」になっていったんです。
――これまでにもたくさんの先生が登場されましたが、振り返ってみて印象的だった方を教えてください。
漫画の描き方は本当に人それぞれで、ペンを持つ位置からしてみんな違います。例えば萩尾望都さんはペンの先の方を持ち過ぎで、猫が爪で引っかきながら描いているような感じがして面白かったです。
あとは藤田和日郎さんのホワイトの使い方。ホワイトでの修正は1~2回が限度だと思っているのですが、彼の場合、4〜6回は塗っているんです。あんなに塗ったら、原画は数年したらひび割れてしまうんじゃないかなと。だったらデジタルで描いたほうが良いのでは! とも思いますが(笑)、アナログでやっているおかしさが作風に出ていますよね。
――萩尾望都さんやさいとう・たかをさんなど、レジェンドでありながら現役でずっと描かれている方もたくさん出演されていましたね。
この番組をやっていて、漫画家に定年はない、描けるうちはずっと描くというのが我々の宿命だなとつくづく感じます。僕は物心ついてからずっと描いていますが、命を終えるときまで描いているんだろうなと思います。