アドリブは「相手を思いやっていないとできない」
――アドリブがとても多い現場だと聞きました。
それはもう、うちの師匠が(笑)。
僕ですら西田さんが次にどんなアドリブの球を投げてくるか本番まで分からないです。でも、絶対におもしろい。アドリブを西田さんが投げると、ボールはこっちに向かって飛んできているんです。だから、受け手の僕がこぼすと僕のNGになるんですよ(笑)。そういった意味では“アドリブ合戦”は、とっても責任重大。西田さんはアドリブで有名ですが、ストーリーから逸脱していることを言ってるわけではないし、正解を投げているんです。
「(アドリブ)すごいから大変なんだよ」って言う人は、それは西田さんのせいではなく、取り手の問題だと僕は思っています。銀幕のスターの球を取れるっていうのは、いち若手俳優として最高の環境です。でも、その分(良い球を)返してやろうって思いますよ!
西田さん、大御所ですが結構“ゲラ”なんです(笑)。だから、(面白いアドリブを)やり返すと喜んで下さるんですよ。
アリスちゃんもそれをゆうに越えてきます。「何この子!?」って思うときも多々ありますし、素晴らしいです。
――アドリブは柔らかい状態でいることが大事なのでしょうか。
(台本に)書いてある文字だけしか覚えていないと対応できないかもしれないです。シーンの前後や台本の流れが頭に入っているかとか、相手がどんなキャラクターかとか。僕はアドリブが好きだし、お芝居に必要なことだと思います。決して迷惑なことではないし、相手を思いやっていないとできないことでもあると思うんです。
――突拍子もないことを言うわけではないのですね。
(突拍子もないことを言うと)シーンが成立しないですからね。相手をつぶそうと思えばつぶせてしまう。そうじゃなくて会話劇を楽しんでいただくためにアドリブは必要なエッセンス。西田さんを側で見て、それを教えていただきました。
――ハマちゃんの役作りでどういったことを意識されましたか。
ハマちゃんを演じる上で一番は、毒を抜く作業。ハマちゃんは言葉的には結構乱暴なことを言っているんですよ(笑)。だけど、乱暴なことを言って不快感を与えてしまったら、僕の憧れるハマちゃんではなくなってしまう気がするんです。
たぶん佐々木課長(吹越満)もあんなに生意気言われて、悪態つかれているけど、ハマちゃんのことをすごく好きだと思うんです。それは吹越さんの表現のおかげではありますが、それに頼りっきりだと関係が成立しない。大先輩・吹越さんの受け手としてのすごさ、あれに甘えっきりではなくて、僕も毒を抜かないと2人の関係は良くならない気がします。
ハマちゃんとスーさんがいかに仲良しだと言っても、毒っ気が強すぎると見ている人は気分が悪くなると思うんです。若いやつがおじいさんをいじめてるみたいになるから(笑)。それだけは避けたい。乱暴なことを言っても、相手を嫌な気持ちにさせない、そこを目指しています。