「テレビ朝日新人シナリオ大賞」史上最年少が大賞に!
第16回「テレビ朝日新人シナリオ大賞」の決定発表記者会見と授賞式が6月20日、東京・六本木のテレビ朝日本社で行われた。
今回は、テレビドラマ、オリジナル配信ドラマ、映画の3部門に分けて募集する形態に一新。合計1845篇の応募で、テレビドラマ部門に819通、オリジナル配信ドラマ部門では515通、映画部門には472通の応募があり、大賞には寺下佳孝氏の「ずるいよ、みんなっ!」(オリジナル配信ドラマ部門)、優秀賞には福島伸幸氏の「LastMessage」(オリジナル配信ドラマ部門)、荒木伸二氏の「二十年、待って。」(映画部門)が選ばれた。寺下氏は、現在23歳の神戸在住の大学院生で、同賞史上最年少の受賞者となる。
「テレビ朝日新人シナリオ大賞」は、“フレッシュで有能な脚本家の発掘および育成”と“制作現場の活性化と魅力的なコンテンツの提供”を目指して企画され、井上由美子や岡田惠和、両沢和幸といった有名脚本家が選考委員を務め、これまで古沢良太ら新進シナリオライターを輩出してきた。
大賞を受賞した寺下氏の「ずるいよ、みんなっ!」は、容姿も能力も平均的なごく平凡の中学生男子だが、腹の中だけは人一倍腹黒い四ノ宮公平を主人公とした3つの短編。
寺下氏は「この場に立つため高校生の時からシナリオを書き続けてきたので、評価していただき、とてもうれしいです。今後どうするかが大事だと思うので、これで満足せず、自分らしいシナリオを描いていきたいと思います」と意気込んだ。
大賞受賞者には500万円の賞金が授与されるが、その使い道について寺下氏は「いただいた賞金で、両親に旅行をプレゼントしたいですね。あとは演劇をまだ一度も見に行ったことがないので、観劇に行って勉強したいと思います」と意欲を見せた。
選考委員の岡田氏は「小さな世界をスペクタクルに描いていて、なかなかの書き手だなと思いました。実は、寺下さんは23歳で、僕の次男と同じ年。そんな若者に大金を渡してよいものかとは思いますが、どうか人生を誤らないでいただきたいですね(笑)」と、“親心”を見せた。
また、優秀賞の福島氏「LastMessage」は、“死刑になるための殺人”により娘を殺された刑務官が、死刑確定者となった男に絶望を与えることで復讐(ふくしゅう)を果たそうとするストーリー。
福島氏は「山本周五郎先生に憧れて小説家になるつもりが、なぜかシナリオを学んできました。時代劇をやりたくて、この受賞作も本当は時代劇として描いたものをベースに、設定を直して仕上げた作品です。いつか時代劇の仕事に関わりたいと思っています」と明かした。
選考委員の井上氏は「普通のドラマや映画に負けないようなテーマを持っており、これをオリジナル配信ドラマ部門にぶつけた思い切りが素晴らしいと思いました!」と絶賛。
同じく優秀賞の荒木氏の「二十年、待って。」は、ゆくゆくは結婚したいと申し出た荻野勇一に、右田リリは「二十年、待って」と答える。リリは幼いころに父と姉を殺されるも、不起訴となり今ものうのうと生きている犯人を殺そうとしていた。
自首して模範囚でいれば、二十年ほどで出られる…そんなリリの決意に、荻野は自らもその計画を手伝うことを誓う…という物語。
両沢氏は「荒木さんのシナリオは前半と後半が表裏一体になっているトリッキーな作品で、構成力は素晴らしいのですが、今の時代、この映画に出資者が集まるかどうかが気になりました」と評した。
すると、荒木氏は「今回、最終選考に残って3人の先生方にガチで作品を読んでいただき、ガチでお言葉をいただき、すごくうれしく思っております。賞金はさっきまでパーッと使おうと思っていたのですが、自分の作品には出資が集まらないと先ほどの講評で聞き、出資しようかなと思います。寺下さんも福島さんも旅行だけでは賞金は使い切れないと思いますので、お二人にも出資していただこうかなと思います(笑)」と小粋に語り、会場を沸かせた。