――監督からは具体的にどんな指示を受けましたか?
とにかく“タイミング”について言われました。「こういう動きをした後、このタイミングで前に出る…」というようなことです。プロレスっていうのは、リングに上がって試合が始まると“間”ができるんですよね。この“間”がいい選手と試合をすると疲れないんですが、逆だとすごく疲れてしまう。それは相手の選手に対してというよりも、お客さんをつかめるかどうかというところでね。間っていうのは選手ごとに違っていて、それが個性にもなったりするんですよ。僕のように35年ぐらいやっていると、「こいつはこういう選手だな」っていうことを感じながらお客さんをつかまえようという意識があるんです。でも、今回のようなドラマの撮影現場では、お客さんがすぐ周りにいて見ているわけじゃないでしょ。だからちょっと勝手が違いましたね。そういう意味で、監督さんからすると僕はドラマにおける間が悪かったんじゃないかな。いろいろ考えたり、質問しながらやってみたんですけど難しかったですね。でも、いい体験をさせてもらえたと思っています。プロレスもそうですが、間がうまくかみ合った時はすごく楽だし盛り上がる。でも、全然かみ合わないとこれほど苦しいことはないんです(笑)。だから短い撮影だったけど、何回も失敗しちゃいましたね。最終的には、監督さんが「もう、これ以上やってもしょうがない…」って思ったんじゃないですかね(笑)。
――プロレスにおける“間”を感じられるようになったのはいつごろからですか?
いつごろなのかなぁ。最初の10年、20年はとにかくがむしゃらにやってきましたからね。これはあくまでも僕の個人的な考えですけど、人生も間なんじゃないかと思っているんですよ。間がいい状態で進んでいる時は、つらい仕事でもすんなりこなしていけるけど、間が悪いとしんどい。僕自身、プライベートでももう少しいい間を作ってやっていけたらと思いますね。若い時は、無理やりというか強引というか、間なんてあったもんじゃなかった。自分が傷ついても、周りの人に迷惑を掛けても何も感じないような時代で、仮に相手の人がいい間を作ってくれてもそれにすら気付かないようなね。ここ何年間かで、ようやく自分のほうから居心地のいい間を作れるようになりました。それは今後の目標でもあるんですよ。すべてのことにおいて間を良くすれば、自分からもう一歩踏み出せて、いろいろと決心がつくこともあるんだと思う。僕なりの人生ってそういうものかもしれないと思い始めています。
――プロレスとは違う間を体験できたドラマ出演ですが、今後もお芝居に挑戦することはありそうですか?
いやいや。もちろんないですよ(笑)。そういう方向に伸びるレッドカーペットは僕にはありません。リングに向かうレッドカーペットはあるかもしれませんけど。いや、リングでも、もうないかな? とにかく、また芝居をするなんて、そんな大それたことは考えていません。
――では、貴重な出演作となったこのドラマをご覧になる視聴者の方に一言お願いします。
僕も自分の出演シーンを見ましたが、何も感想はない…ということにしておいてください(笑)。プロレスラーとしての僕のファンで、今回のドラマを見てくださる方もいると思うんですけども、あまりこのことに触れないでほしいなぁ(笑)。見たあとで、ひっそりと胸の中に収めてもらえればうれしいです。
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