助演男優賞は香川照之 原作に不在の大和田が『半沢の世界に実在した証』【ドラマアカデミー賞】

2020/11/05 17:00 配信

ドラマ

「半沢直樹」香川照之が第105回ドラマアカデミー賞で助演男優賞を受賞※提供写真

「大和田と半沢の決着をどうするか」が最大の難物だった

――ラストシーンでは、半沢を焚き付け、銀行を辞めることを思いとどまらせる演技も圧巻でした。あのシーンで難しかったことは何でしょうか?

ラストシーンの中で、難しいことはありませんでした。むしろ、あのラストに行き着くまでの「(原作にはない)大和田と半沢の決着をどうするのか」を、ああいう流れに決めるまでの紆余曲折こそが難物でした。さまざまな案が出される中で、原作にある頭取の辞任はそのまま出そう。あとは誰が辞めるのか。そんな流れの中で大和田が辞めることで落ち着来ました。実はあのシーンにはカットされた部分が多く、そこがあれば、さらにインパクトがあるシーンになったはずです。

――堺雅人さんも、今回で主演男優賞を受賞されていらっしゃいます。改めて共演して、堺さんの俳優としてのすごさをどのように感じましたか?

「準備は念入りに、仕留めるのは一瞬で」は、古田(新太)さんのセリフでしたが、これはまさに堺さんのためにある言葉でした。あれだけセリフを間違わずに言える。しかも、昨日今日もらうような新作の脚本のセリフを完璧に覚えられるのは、ひと月間、舞台の稽古をしても至難の技です。生来の頭の良さ、エンジンの性能はもちろんですが、寝てる間さえセリフの修練をしているのは間違いないと思える程の、「努力の量」が彼のすごさです。

――大和田は半沢にとって敵なのか味方なのか、視聴者にとってもワクワクする展開でした。香川さんから見て、大和田は半沢をどう思っている、どのように評価しているものとして演じていたのでしょうか。

半沢はすべてのバンカー、いや日本人にとって、長いものに巻かれない異質な人物です。その点では、大和田のみならず多くの人々の敵となる存在です。しかし結果は残す。普通ならば自分の父親を自死に追い込んだ人間を衆人の前で土下座させたのですから、もう顔も合わせたくないでしょう。しかし、よほど何かの縁がある二人なのか、偶然軌道が見事に重なり合って、周期的にぶつかり合う惑星同士のようでした。