――バカリズムさんは井浦さんのどんな部分に魅力を感じて、脚本でも一馬に当て書きするような形にされていったのでしょうか。
バカリズム:最初に井浦さんの名前を出してもらった時は、「こういうことをやろう」という企画書の段階だったんです。まだ僕にも正式なオファーは来ていなかったんですけど、終始シリアスなトーンでバカバカしいことをやりたいと思っていた時に、「井浦さんはどうですか?」と言われて自分の中でバチーンと当てはまったというか。
この表現が合っているかわからないですけど、このドラマは漫画で言うとすごく「劇画タッチ」なんですよ(笑)。何となく劇画風にどうでもいいことを掘り下げていったら、よりバカバカしく見えるんじゃないかと思って。
井浦さんはいろんな役をやられていますけど、何となくシリアスな作品で、明るい表情というよりも難しい顔して出てきて、淡々と演技をしている印象があったので、名前を出された時には「正解が見つかった」というか。
まだオファーを出して返事が来るか来ないかというタイミングでしたけど、勝手に自分の頭の中で出来上がっちゃって、 初稿を書き始める時にはもう井浦さんにやってもらうつもりで、脳内再生しながら書いていましたね。
――井浦さんは今回めったにない「笑える」役どころですが、台本を拝読していても、これを井浦さんが演じていると想像するだけで笑ってしまうところもありました。演じている中で難しかったことはありましたか。
井浦新:台本を読んで、バカリズムさんや住田監督が自分に何を求めているのかは察知することはできたんです。その上で、「これは自分が面白くしようと思ってやっちゃダメだ、とにかく淡々と真面目に、真剣にこれをやることが面白く見えるようになるんだ」と。
(バカリズムさんが描きたいものを)形にするためには、自分が狙っていっちゃダメだし、「このせりふを面白く言おう」なんてやったらもう失敗する(のは想像できる)っていう。なので、日常の当たり前の会話、当たり前のテンションでこの作品の中にいなきゃいけないと思っていました。
でも、なにせ台本が面白いので、たまに欲が出てテストとかでやっちゃったんです (笑)。「このくらいやっちゃおうかな、この役だったらやってもいいかな」とか思ったんですけど、ポロッとやってみたらやっぱりダメなんです。
そうした欲が出てきちゃう気持ちを抑えて、常に「面白く」とか「笑わせよう」とか思わないように、バカリズムさんが絞り出してきたせりふを言い続けるというのは、苦労したところではありました。
面白いことを伝えたくなっちゃうけれど、「この役は普通でいなければいけない」というのを(理解して欲を)抑えていることが、一番エネルギーを使うことでもありました。
(後編へ続く)
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