監督賞は「半沢直樹」半沢・大和田の共闘は『以前から、チャンスがあればと』<ドラマアカデミー賞・インタビュー前編>

2020/11/06 17:00 配信

ドラマ

第105回ドラマアカデミー賞で監督賞を受賞したのは「半沢直樹」の福澤克雄氏、田中健太氏、松木彩氏(C)TBS

「このドラマには大和田というキャラクターが欠かせない」

――池井戸潤さんの原作と大きく違う点は、小説ではあまり出てこない大和田が再び半沢の敵として立ちはだかるところです。

福澤:どうしても小説とドラマは違うし、やはりこのドラマには大和田というキャラクターが欠かせない。香川さんがダースベイダーのように大和田を演じてくださって、視聴者の皆さんからの人気も絶大ですから。

原作には半沢の直属の上司だった内藤部長が出てきますが、その役割を大和田に変更できたのは、展開上、大きかった。大和田はシーズン1で半沢に土下座させられたけれど、「こいつの言うことはたしかだ」ということは認めているわけです。

今回は、半沢にだんだん親近感を抱くようになり、ラスト、銀行を辞めるという半沢を説得する場面では大和田流に友情を示したというところじゃないでしょうか。ただ、単純に「こいつをつぶしてやりたい」という気持ちもあったんですけど(笑)。不思議なものでこの2つの感情は両立するんです。

――半沢が前作では完全に敵だった大和田に協力するという展開にも驚きがありました。

福澤:続きとしては以前から考えていましたね。どこかでチャンスがあれば半沢と大和田が手を組む展開にしたいと。第4話で半沢に電脳雑伎集団の粉飾決算を告発させるため役員会議に引き入れるのは、原作では内藤部長だけれど、それを大和田にするというアレンジがうまくいったかなと思っています。

――原作では白井国土交通大臣(江口のりこ)が箕部幹事長(柄本明)と共に失脚しますが、そうではなく、彼女が半沢たちと組み箕部という巨悪を倒すのも、ドラマ独自の展開ですね。

福澤:それも最初から考えていました。やはりラストは盛り上がる展開にしたいし、(最終回で半沢や白井と組むことになった)国税庁の黒崎(片岡愛之助)にも活躍してもらいたい。白井大臣の気持ちとしても、自分の後ろ盾である男がひどいことをしているのは許せないでしょう。現実でも政治には不正問題があるので、白井大臣のような人がひとりでも出てくるといいなあという思いで…。

池井戸先生に相談すると「どうぞやって(アレンジして)ください」と賛成してくださった。白井役の江口のりこさんにも、終盤の展開はそれとなく伝えていました。だから「わ・か・り・ま・し・た・ね」と言う場面などは調子に乗っている感じでいいけれど、根っからの悪人としては演じず、芝居を抑えてもらいました。
(取材・文=小田慶子)

(後編へ続く)