映画「沈まぬ太陽」が24日に公開初日を迎え、主演の渡辺謙、三浦友和、松雪泰子、鈴木京香、石坂浩二と、若松節朗監督が都内で舞台あいさつを行った。
本作は、山崎豊子の同名小説を映画化したもの。航空会社で不当な扱いを受けてきた主人公・恩地元(渡辺)が、航空史上最大の事故に対し、強い信念と不屈の精神で立ち向かう姿が描かれる。
渡辺は初回の上映を観客と一緒に鑑賞。上映後に目に涙を浮かべて舞台あいさつを行い、「自分の映画に対して感動して泣いているんじゃないんです。ここまで来るのに、どれだけみんなが大変な思いをしてこの映画を作ってきたのかを、ちょっとだけご理解いただきたい、そう思っています。スタッフの皆さんの熱い気持ち、事故の被害者520人の方々の気持ち、そのご遺族の気持ちを絶対に忘れることがないように、そんな気持ちで頑張って参りました。そうやって映画を作れたことを誇りに思ってます」と深々と頭を下げて、感謝の気持ちを語った。
また、渡辺は「原作を忠実に再現しようとするが故に、最後まで撮影ができるのか、公開ができるのか危ぶまれる状況にありました。しかし、リーマンショックなど、経済や社会情勢がどんどん変化し、大きな時代の変革を迎え、過去を風化させてはいけない、もう一回日本を見詰め直さなければいけない、この映画がきっとそういう時代を待っていたようなそんな気がしました」と作品が持つ意味を語った。
恩地のライバルで、航空会社の取締役・行天四郎役の三浦は「いろいろひどいことをして申し訳ありませんでした。こういう役だと、どういう顔をして舞台あいさつをしていいのやら困りました。今日の出演者の方はイメージ通り、見た通りの、清く正しく美しくの役でうらやましいなと思っているのですが、でもこういう屈折した役もなかなか楽しいと思った次第です」と悪役を演じた感想を語った。
若松監督は「謙さんと本当に長い長い旅をしたなと思います。でも、おかげさまでマイルがたくさんたまりました。友和さんは奥さんに悪い役だけはやめてと言われたはずなのに、悪役を引き受けていただいてうれしかったです。松雪さんは腰が痛かったのに友和さんにソファにぶん投げられて、本当に友和さんは悪い人です。時代がこの映画を救ってくれたと思います。いま倫理が問われている時代に、この映画を世に出せてうれしいです」と公開にこぎ着けた喜びを語った。
最後に渡辺は「こんな厳しい社会情勢の中、経済状況の中、仕事を失ったり、会社から裏切られたり、そんな方がたくさんいらっしゃると思います。あしたどうやって希望をつないでいこうか、そんなことを思い悩んでいる方々も大勢いらっしゃると思います。僕はこの“沈まぬ太陽”をどんなふうに受け止めようかなと思っているのですが、きっと力強く温かく大きく地平線に沈もうとしている太陽が目の前にあって、でも油断して目を離してしまうとすぐあっという間に地平線の中に消えてしまう。だから今、温かさ、力強さを目に焼き付けて、あしたの朝日を待とうと、僕は理解しました」と作品への思いを語って締めくくった。
また、舞台あいさつでは、劇中の音楽を手掛け、本作のモデルとなった日航機墜落事故で父を亡くした遺族でもあるバイオリニスト・ダイアナ湯川がロンドンから来日して演奏を披露し、観客から大きな拍手を浴びていた。
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