今から約30年前の中東といえば、緑の閃光うごめく湾岸戦争の空爆映像が強烈だったことを記憶しています。その強烈なイメージに隠れてしまったのか、現代史的にも奇跡的な出来事であった1993年の「オスロ合意」の記憶は、おぼろげです。この歴史を題材にした本作は、人間性の豊かさや対話の奥行といった硬軟併せ持つ色彩でつづられています。
決して大国とは言えないノルウェーの中立の立場で、信念を貫く社会学者テリエ・ラーシェンを演じる坂本昌行さんの力強いまなざしとおおらかなリーダーシップ、その妻で国際社会に切り込んでいくモナ・ユールを演じる安蘭けいさんの勇姿ある佇まい、合意という困難な壁に挑む登場人物たちを、14名の頼もしいキャストの魅力を生かして、今に再生したいと思います。
この座組みなら、こんな時代だからこそ、絶望に差し込む光を身近なものとして、忘却されてはならない真実として、お見せすることができるでしょう。
ちょうど僕がニューヨークに行っていた時に上演されていたのがこの「Oslo」で、とても話題になっていたのを覚えています。題材になっているオスロ合意に関してはニュースでしか知らなかったので、色々と調べていくうちに、様々な背景がある作品にお声がけいただいたんだなと改めて認識しました。
当時の新聞記事に「忍耐と信頼」とありました。僕らも良く使う言葉だけれど、実際に経験された方から出る、重みを感じます。人が動くことで国をも動かす大きな話ですが、その人物の根底にある、軸にあるものを表現できたらと思います。
河合くんとは、作品で共演するのは今回が初めてです。同じステージに立ったら、当たり前のことですが、先輩後輩は関係なく、一役者として向き合いたいので、自由にやってほしいですね。
舞台上で生きる、生でストーリーが展開していくというのは、唯一無二の機会だと思います。その喜びを感じながら、この作品のストーリーをお客さんにお届けできたらと思います。
このような作品に呼んでいただき大変うれしく思っています。この作品の世界観を表現できるよう、よりわかりやすく伝えられるよう、世界の情勢も学びながら、稽古場で話し合いを重ねて作っていきたいです。
遠く離れた国に起こった実話で、なかなかなじみのない話かもしれませんが、坂本昌行さん演じるテリエと私の演じるモナという夫婦の、二人で世界を変えようと一歩踏み出した“信念”の物語でもあります。
国や世界という大きな話ではなくとも、自分ではなく人のために、という想いはきっと皆さん持っていらっしゃると思います。ぜひ劇場で、同じ時間を共有しながら、彼らの熱い想いを一緒に感じてください。
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