――今回の作品を通して、テロや天災など“今すぐそこにある危機”について、改めて感じたことはありますか?
佐藤浩市:例えばアメリカは、そういう危機感からほど遠い国民感情があった中で、“9・11”(2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件)以降、がらっと変わりましたよね。でも日本の場合は、天災に関しては常に危険にさらされているところがあるけど、テロに対しては、言葉や頭では分かっていながら実感としては捉えきれていない。原作の小説は、そういったことを前提にして書かれている部分もあるわけじゃないですか。
だけど今年、新型コロナウイルスというある種のテロが急に起こったことで、予想外のことが日本でも起き得るんだっていう現実を突き付けられた。ただそれでも、そのことを認識している日本人が果たして何割いるのかなと…。とはいえ、昨年この映画を作っていたときと、コロナ禍の中で映画を公開する今とでは、われわれ提供する側も、それを受け取るお客さんも、だいぶ意識は違ってきているんじゃないかなという気はしています。
石田ゆり子:この映画を撮影していた頃は、2020年がこんな状況に陥ってしまうなんて誰も思っていなくて。今年の春、コロナの影響で東京が静かになったとき、本当に“サイレント・トーキョー”がやって来たと思って、とても恐ろしかったです。やっぱり物語より現実の方が怖いなって。そんな“一寸先は闇”という想像もつかないような時代を生きているという意識を持った上で、皆さんがこの作品を見たときに、どのように受け止めてくださるのか、とても気になります。
西島秀俊:世界中でコロナが流行し始めたとき、最初はまだ何が起きているかが分からないという時期がありましたよね。そのときは、危機感の大きさは全員違っていたと思います。何かが起きたときにどこで線を引くのかは、みんなバラバラで何が正解なのかも分からない。劇中で、テロが起きるかもしれない日に渋谷の街に集まってきた人たちも、よく分かっていなかったと思うんです。
そういう意味では、今回の作品に参加することで何かしら学ぶことがあるのかなと考えながら撮影に臨んでいたところもあります。普通の日常がずっと続くわけではないし、明日が今日と同じ日になることはない。今、この映画を見て皆さんがどう感じるのか、僕もすごく興味があるし、いろんな感想をお聞きしたいなと思います。
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