「NHKスぺシャル パンデミック 激動の世界」が伝える社会への視座<大越健介キャスターインタビュー>

2020/12/06 07:00 配信

芸能一般

【写真を見る】マハティール・マレーシア前首相をインタビューする大越キャスター(C)NHK

――マハティール前首相を取材対象とした理由をお聞かせください。

三村:マハティールさんは、つい最近、94歳までマレーシアのトップを務められていました。アメリカや中国などさまざまな大国に対して、マレーシアという決して大きくない国で、非常に難しい国際政治の舵取りを平和に遂行されてきた。その国際政治を知り尽くした方に今後の世界の行方を語っていただきたいというのが、選択理由です。

――何か日本への提言のようなものは得られましたか?

大越:詳しくは番組の中で紹介できたらと思いますが、日本の立ち位置は、アメリカと中国の間の緊張感が力をもって向いてくるところにあり、緩衝地帯でもあり、アメリカ的な民主主義と、中国の大国主義、日本は両方の肌触りが分かるところがあります。

マハティールさんは、中国という国の成長をまざまざと見てこられた。それは日本も同じですが、中国は抑圧的だ、拡張主義を取っているという言葉で片付けがちなところとは別の視座をお持ちです。大きく台頭してきた中国との向き合い方において何が大事なのか、根源的なことを考えられている。日本もその意味では今大事なポジションだ、と話していました。

――イアン・ブレマーさんの視点はいかがでしたか?

大越:ブレマーさんには、10年前にインタビューをしまして。当時、アメリカを中心とした西側諸国が主導する世界が、冷戦終結後はほぼ形作られていた中で、アメリカは中心的指導力をこれからどんどん失っていくのではないか、そうすると”指導者なき世界”というカオスになっていくのではないか、ということを「Gゼロ」という言葉を用いて提唱していました。それが非常に新鮮だったのでロンドンまで追いかけて取材しました。以来、日米関係やアメリカが絡むような問題に関して、何度かインタビューをしています。

今回、彼は、Gゼロはとっくに到来したと考えていました。Gゼロが到来したカオスな状況に加え、テクノロジーの世界で中国とアメリカが技術覇権の争いを展開する中で、これからうまくマネージメントしていかなければいけない、という視点で話してくれています。

――そこに米大統領選の影響はあるでしょうか?

大越:アメリカ大統領選挙の影響はとても大きいと思います。選挙を通じてアメリカはものすごく二極化しました。ものすごく分断された影響はこれからずっと続くでしょう。

アメリカは、United Statesというように、Unitedを常に唱えていないとなかなかまとまらない国だと思いますが、それがもっと難しくなる。そうするとアメリカは、国としてのまとまりを欠いた状態になる。

一方、中国はきわめて効率的に国の力を発揮している。そういった意味で、力のアンバランスやパワーバランスの変化は間違いなく起きており、この見方はブレマーさんだけでなく、アリソンさんにしても、ほぼ世界の識者の一致しているところかなと思います。

私たちはそこにどう向き合うのか。日米同盟は絶対変わらないけれど、中国というスーパーパワーが明らかに出来上がっている。そこにどうやってマネージメントしていくのか。お隣との付き合いをどううまくやっていくのかはものすごく大事ですよね。

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