大森靖子、“壊れて”から“直す”までを描いた新アルバムを語る<『Kintsugi』インタビュー前編>

2020/12/09 11:00 配信

音楽

アルバム『Kintsugi』をリリースした大森靖子撮影=石塚雅人/衣装=rurumu:

12月9日(水)に大森靖子のアルバム『Kintsugi』(全4形態)がリリースされる。同アルバムには、配信限定でリリースした「シンガーソングライター」(7月)や「KEKKON」(9月)をはじめ、全11曲が収録。

タイトルの“Kintsugi(金継ぎ)”は割れた器を漆でつなぐ日本の修復技法で、つなぎ目に金などを塗って、装飾にしてしまうことが特徴。そのタイトル通り、今作は人間のさまざまな面を描いた楽曲がつなぎ合わさって、1枚のアルバムを構成している。

今回はそんな『Kintsugi』について大森にインタビュー。この前半では、アルバムのアートワークや、“壊れて、直す”“最初が夕方”というコンセプトに関する話を紹介する。

実際に割って金継ぎした皿を撮影してジャケット写真に


――インタビューの前に撮影をさせていただきましたが、今回は各媒体の取材によって衣装を変えてくださったいうことなので、この衣装に決めた理由を教えてもらってもいいでしょうか。

背景が黄色と聞いたので。『Kintsugi』にちなんでですよね?

――そうですね。あと、新しくなったアー写を拝見して、今回は明るいイメージの方がいいかなと思いまして。

黄色は自分でも自分のイメージに選ばないし、今まであまり選ばれなかった色だったんですけど、去年、峯田和伸さんが曲を作ってくださったときに、“黄色のイメージの曲がないから黄色の曲があってもいいんじゃないか”と言って作ってくださったこともありましたし、“こういうのもいいんじゃない?”って黄色を差し出してくださるのはうれしいなって思いましたね。なので、きれいに写りそうな黒とかピンクの服がいいかなと思って選びました。

――ビジュアルの話を続けますと、『Kintsugi』リリースに合わせて新しくなったアー写は、どういうコンセプトで撮影したんでしょうか。

アー写の撮影はジャケット写真の撮影でもあったんですけど、まずジャケット写真を金継ぎにしようと思ったときに、メークで顔を割る感じにしちゃうと、ハードなロックっぽい印象になっちゃうなと思って。なのできれいに撮った写真をお皿にプリントして、それを割って、本当に金継ぎをして、それを写真に撮ってジャケット写真を作ろうっていう話になったんです。

服がたくさんあるのは、全身のショットをお皿にプリントして割るって考えたときに、後ろのディテールが細かくなっていた方がきれいだろうなって話になったのと、私、いろんな自分をファンの人に見てもらいたいので、服をすごくたくさん買っちゃうんですよ。それが今までの積み重ねであったり、「あのときのライブで着てた服だ」って思ってもらえるかなって。

それプラス、アートワークを担当してくださった増田ぴろよさんと一緒に背景を作って、自分が背景に同化してゴチャゴチャして見えないように、素肌を見せた方がきれいに写るだろうなと思ったので、ちょっとだけ痩せて撮影したって感じです。

――では楽曲について聞いていきたいと思うのですが、まず、今回のアルバム制作を振り返ってみていかがですか?

結構長期間作っていましたね。あと、今までは「アルバムを作るぞ!」ってアルバムのための曲を締め切りまでに作っていったんですけど、このアルバムは去年47都道府県ツアーを周りながら、「こんな曲とか、こんなことをファンの人に向けて歌いたいな」と思って作った曲だったり、これを作らないと生きていけないみたいな曲がいくつかあって。

「こういう曲が世の中にあったらいいのに」とか、「こんな曲も歌ってみたい」という気持ちやアーティストとして仕事で作るよりは、作らないと自分が生き延びられない、歌わないと生きていけないという、生き延びるために表現を曲に昇華しているという感覚がこのアルバムにはありました。

関連人物