――武漢脱出オペレーションに携わった当事者の方を取材されてみて、いかがでしたか?
私たちが想像していなかった、知らなかった、感染症と隣り合わせのオペレーションでした。ご苦労といったら当たり前の言葉過ぎてしまいますが、皆さんが本当に苦労されてあのオペレーションが成立していました。初めて知ることばかりで、すごく生々しい証言です。ここまで大変だったのかということを、ぜひ皆さんにも見て、知っていただきたいです。
あの当時は、まだコロナという感染症のこともあまり分かっておらず、感染するかもしれない危険の中、そして防護服なども十分ではない中で、皆さんが必死で対応されていました。感染症が理由でチャーター機を飛ばすのも、日本は初めてということで、「初めての感染症で、初めてのチャーター機、初めてのオペレーション」と、初めてのことばかり。自分たちが感染するかもしれないという恐怖と不安と隣り合わせの中でのオペレーションだったんだとよく分かりました。
――現地では中国の方の協力もあったとのことですが?
さまざまな人たちの尽力があって可能になったオペレーションだったんですよね。日本にお世話になったから恩返しをしたいと一生懸命頑張ってくださった方がいた。自分の身の危険も顧みず、手を上げてくれた方がいた。人間関係、人間のつながりが生かされたということだなと思いました。
――これまでのコロナについての報道を振り返っていかがですか?
これまで新型コロナウイルスの報道に携わって一番難しいと思ったのは、感染症がもたらす被害の全体像が見えてこないことです。
私たちは、この“大きな象”は鼻が長いのか、しっぽが長いのかが分からず、手探りで報道をしてきた。いろんなところを触ってみながら、きっとこの“象”はこんな“象”だ、と探り探りしながら伝えてきたんだと思います。
ですから、断定的になるのは危険だと思います。断定できないのが感染症ですし、私たちは目に見えないウイルスと闘っているわけです。共存しなければならないという考えもあると思いますが、全体像が見えていないと正しい共存の仕方も見えてこないと思います。
“安心だ”ということも危ないし、“ものすごく怖いんだよ”と煽ってばかりというのも違いますし、事実関係に基づいて粛々と丁寧に伝えていくべき事柄だと思います。
――今回久しぶりにご自身で現場取材をされていかがでしたか?
現場はいいなと思いました。本当にやりがいがあります。人のお話を聞くのが私の仕事みたいなところがあるので。茂木外相とも久しぶりにお会いして長時間お話を聞くことができて。現場に行くと、すごく夢中になっちゃうというか。勝負みたいなものです。
――視聴者にメッセージをお願いします。
外務省の在外公館の大事な仕事は“邦人保護”だといいます。でも私は今まで、その言葉を聞いてもなかなかピンとこなかったんです。しかし今回取材をしてこの番組を通じて、邦人保護が一番の仕事であり、皆さんが体を張って仕事をされているということが身に染みて分かりました。
感染症の恐怖とも闘いながら、日本人とその家族を救出するということにどれだけの時間と労力が費やされたかを、ぜひ皆さんに見ていただきたいです。
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