【インタビュー】花澤香菜の4thアルバム『Opportunity』は、“UKサウンド”がテーマの一枚。シンプリー・レッドのミック・ハックネルなどが楽曲提供

2017/02/22 13:06 配信

音楽

花澤香菜の4thアルバム『Opportunity』は2月22日リリース


花澤香菜から4thアルバム『Opportunity』が届けられた。“UKサウンド”をテーマに制作された本作には、空気公団がプロデュースした「透明な女の子」、秦 基博とのコラボレーションによる「ざらざら」などのシングル曲のほか、シンプリー・レッドのミック・ハックネルが作曲した「FRIENDS FOREVER」、1990年代初頭のマンチェスター・サウンドを想起させる「Marmalade Jam」、花澤がイギリスを訪れた時に印象的だったという“brilliant”をタイトルに冠したポップチューンなどを収録。豪華クリエイター陣による洗練された楽曲と花澤香菜の豊かなボーカル表現がたっぷりと堪能できる作品に仕上がっている。

──ニューアルバム『Opportunity』がリリースされます。今作のテーマは“UKサウンド”ということですが、手応えはどうですか?

すごくいいです! 特に“UK(サウンド)”を聴いてきた方々はものすごく食いついてくれますね(笑)。そういう音楽を知らない方も「歌い方のバリエーション、いろんなタイプの曲が入ってるアルバムだね」って言ってくれて。シメシメって感じです(笑)。

──花澤さん自身も新しいボーカルの表現が出来たという実感がある?

そうですね。曲調的にも新しいものに挑戦していますけど、歌の部分で言うと、ライヴを重ねてきたことが大きくて。2015年に“かなめぐり”というアコースティック編成のライヴ・サーキットを開催したんですけど、その時に“音数が少ないなかで、どう表現するか?”ということを考えたり。今回も北川勝利さんにボーカル・ディレクションしていただいたんですが、“あの時のライヴの感じで歌ってみよう”という共通認識が出来ていたことも良かったですね。

──なるほど。初回盤に入っているフォトブックはロンドンで撮影。ロンドンの印象はどうでした?

もっと都会だと思っていたんですけど、わりとのんびりした雰囲気でしたね。夕方5時くらいになると、みんなパブでビールを飲んでたり(笑)、それぞれ自由に楽しんでいる感じがいいなって。居心地が良かったし、食事もすごく美味しかったんですよ。移民の方が多いせいか、いろんなジャンルのお店があって、ぜんぜん飽きなかったです。

──もちろんパン屋にも…?

行きました! ホテルの近くにグルテンフリーのパン屋さんがあったんですよ。向こうは健康志向が強くて、オーガニック・スーパーもいっぱいあって。あと、狙っていた北欧系のお店にもロケバスで連れていってもらいました。そこのシナモンロールが今まで食べたことがない感じだったんです。シンプルなんだけど、心地良くスパイシーで。香りがセクシーでした(笑)。

【写真を見る】4thアルバム『Opportunity』は全15曲収録。4月からはライヴツアーもスタート


──実際にロンドンの空気を体感したことは、このアルバムにも反映されてますか?

そうですね。いま“のんびりしてる”って言いましたけど、ロンドンの女性は颯爽と歩いていて。イギリス在住の男性も“イギリスの女性は強いよ”って言ってたし、そういう芯の強さがすごく印象的だったんです。レコーディングで“どう歌おうか?”と考える時も、そこは重要なポイントになってましたね。良かったです、ロンドンに行けて。

──アルバムの1曲目「スウィンギング・ガール」はまさにロンドンの女性のイメージですね。エレクトロ系のサウンドで知られるkz(livetune)さんがこういうビートルズ・テイストの楽曲を提供しているのも新鮮でした。

確かに世に知られているkzさんのイメージとは違うタイプの曲ですよね。でも、ご本人は「僕はUKロックで育ったんです」とおっしゃっていたし、この曲が届いた時もみんなで「カッコ良い!」って盛り上がって。すごく耳馴染みがいいし、ノリやすい曲だと思います。ポップなサウンドのなかに“革命前夜”みたいな強い言葉が入っているギャップも好きですね。

──そして「FRIENDS FOREVER」はイギリスを代表するスーパーバンドのひとつ、シンプリー・レッドのミック・ハックネルの作曲。

すごいですよね、ホントに。メンバーが集まっている時に“せーの”で録音したデモが送られてきたんですけど、ミックがすごく楽しそうに、自由に歌っていて。すごくカッコ良かったんですけど“これをどう歌えばいいの?”って。

──でも、しっかりと花澤香菜さんの歌になってますよね。

ミックも日本の女性シンガーが歌うっていうことは意識してくれてたみたいで、メロディはすごくポップですからね。歌詞は西寺郷太さんが書いてくれたんですけど、友達に向けた歌になっていて。私のファンの方は同志的な感じがあるというか、“花菜ちゃんが頑張ってるから、自分も頑張ろう”みたいに思ってくれている気がしているんです。「FRIENDS FOREVER」はお友達に対する歌だから、ちゃんとみんなに届くだろうなって。

4thアルバム『Opportunity』には、空気公団がプロデュースした「透明な女の子」、秦 基博とのコラボレーションによる「ざらざら」などのシングル曲も収録


──1990年代のマンチェスター・ムーブメントの雰囲気がある「Marmalade Jam」、片寄明人さんが作曲したカラフルなポップチューン「FLOWER MARKET」など聴きごたえのある楽曲が揃っていて。なかでも、ミトさんが手がけた「Blue Water」のコーラスワークはすごいインパクトですね!

歌録りは3日間だったんですが、1日目にメインのボーカルを録って、あとの2日はずっとコーラスでした(笑)。100以上テイクを重ねてますからね。スタッフのみなさんに「大変なレコーディングでごめんね」って言われてましたけど、わりと楽しく歌ってましたね。“これを一気に流したら、神秘的な怖さが出ちゃうんじゃないかな?”って思ってたんですけど、出来上がってみたら、ぜんぜんそんなことなくて。大きいスピーカーで聴くと、私の声のミストがバーッと降り注いでくる感じでした。小さいスピーカーだと、顔面スチーマーくらいかな(笑)。

──花澤さんが歌詞を手がけた「brilliant」についても聞かせてください。シックでオシャレな楽曲ですが、歌詞はどんなテーマで書かれたんですか?

曲先行だったんですけど、デモをいただいた時に“演奏しているみなさんの顔が見えるような、ご機嫌なサウンドだな”と思ったんです。曲自体もすごくポップだし、歌詞は柔らかい感じがいいなって。私が歌詞を書くと、どんどん“ざらざら”方向に行っちゃうんですけど…。

──シリアスな内面を掘り下げるような。

そうそう(笑)。でも、この曲はそういう雰囲気じゃないから、とにかく明るくしたくて。1年に1回くらい会う幼なじみの女の子がいるんですけど、彼女とごはんを食べている時、あまりにも愛しすぎて“この子に対してだったら、書けるかも”と思って書き始めたのが「brilliant」の歌詞なんです。その子のことだけではなくて、歌詞のなかにはいろんな要素も入ってるんですけどね。

──自分自身の経験が反映されているわけですね。作詞に対する興味も強まってますか?

やればやるほど難しいなって思います。自分で書きたいという気持ちもあるんですけど、切り替えが難しいんですよ。歌詞を書いていると、そのことばっかり考えちゃうので。ふだんの声優のお仕事もあるから、(歌詞を書いている時は)お相撲さんみたいに顔を叩いて気持ちを切り替えたり(笑)。どうしても内に内に入り込んじゃうんですよね。

アルバム収録曲「brilliant」は、花澤自身が作詞を担当


──アルバムのタイトル『Opportunity』には“機会”という意味がありますが、花澤さんはどう捉えていますか?

“Chance”と似たような意味なんですけど、もっと前のめりな感じなんですよね。“Chance”が偶然得た機会で、“Opportunity”は自ら勝ち取った機会なので。さっきお話したライヴでの歌の表現もそうですけど、いろいろな機会を積み重ねながら出来たアルバムだし、いろんな人との出会いって、一緒に作った感じもあって。『Opportunity』は、すごくしっくりくるタイトルだなって思います。

──今回のアルバムもそうですけど、本当に素晴らしいアーティスト、クリエイターの方々と出会いながら音楽を生み出してきて。貴重な機会の連続ですよね。

声優のお仕事だけでは絶対に出会えなかった方々ですからね。それぞれの方の音楽の作り方も勉強になるし、“いいものを作ろうという気持ちが大事なんだな”ということも実感していて。最初の頃は“私の声を使って表現してもらう”という受け身な感じもあったんですよ。もちろん楽しんでいたけど、(音楽は)声優のお仕事の延長みたいな感覚だったというか。でも、そのうちに“もっと自分を出さないとやっていけないな”って自覚するようになったんですよね。

──音楽活動が始まって5年目。ライヴに対する意識も変わってきましたか?

“このステージでは嘘がつけないな”と思うようになりました。すべて見透かされているような感じがあるというか…。声優のお仕事は“監督が表現したいことに集中する”という感じなんですけど、音楽活動の時は自分自身を意識せざるを得ないので。人間力を計られているというか、もっと自分に近い表現なんだなって思います。2015年の武道館公演あたりからワーッと開けてきて、最近、やっと(ライヴのなかで)自由におしゃべり出来るようになりました(笑)。

──アルバム『Opportunity』のツアーも楽しみです。

「FRIENDS FOREVER」「brilliant」はもうステージで歌っていて。ツアーのリハーサルはこれからなんですけど、いいライヴにしたいですね!

(取材・文 / 森朋之)

初回盤付属のブックレットはロンドンで撮影


【コラム】花澤香菜が今いちばんハマっているテレビ番組は?


ドラマ「奪い愛、冬」(テレビ朝日系)

放送前から注目していたんですけど、予想を超える面白さでした。私、なぜか不倫をテーマにしたドラマにハマる傾向があって(笑)。観ていると、ワクワクするんです。フィクションだからこその面白さなんですけど、ちょっとホラーの要素がある演出も笑える感じがいいなって。あと、鈴木おさむさんの脚本も面白い。(2016年版の)「不機嫌な果実」も観ていたんですけど、(「奪い愛、冬」も含めて)不倫をテーマにしたドラマはいろんな面白さがありますよね。原作も買いましたし、そこから林真理子さんの小説をよく読んでました。ほかには、村山由佳さんの不倫小説「W/F ダブル・ファンタジー」もオススメです。

シンプリー・レッドのミック・ハックネルが作曲した「FRIENDS FOREVER」も収録


花澤香菜のニューアルバム『Opportunity』は2月22日リリース。4月からは東京、愛知、宮城、大阪、千葉をまわるライブツアーもスタートする。

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