――ご自身が演じていて特に印象に残っているシーンやセリフを教えてください。
そうですね…。1つ1つのシーンが容易ではなく、後のストーリーにつながっていくので…。ある特定のシーンを選ぶのはとても難しいですね。毎回、良いシーンがあったんです。どれもト・ヒョンスの人生をたどるうえで必要なシーンなので。
それでも選ぶのなら…。何も感じられないト・ヒョンスの感情が初めて解き放たれる場面ですかね。劇的な状況に追い込まれたときの、自分が一番大切に思っているものを失いたくないという切実さから出る感情の解放といいますか、そういったものをどう表現すればいいかたくさん悩みました。一歩間違えれば説得力を失うかもしれないなと。
視聴者の方が、見ていてト・ヒョンスの感情と状況にずっとついてきたはずなのに、急に感情が解放されていく感じを受けるような。すべての関係性が崩壊して、バランスが崩れていって、ト・ヒョンスすらも描いていたものが崩れるかもしれない。
そういった意味で、ヒョンスがジウォンの前で初めて号泣するシーンはすごく難しくて、多くの視聴者の方々が一緒に悲しんで切ない気持ちで見てくださるシーンだったと思います。ジウォンの前で、ヒョンスのすべての感情が吐き出されるシーンなのですが、そのシーンがあったからこそ、ジウォンが再びト・ヒョンスに対して、自分が愛する夫への信頼を築けるようになります。
リハーサルから大変で、修正に修正を重ねて、監督もアイデアを出し続けてくださり、僕も準備してきたものを元に話し合い、たくさん悩んだシーンでした。ありがたいことに、視聴者の方々が切ない気持ちで見てくださったようなので、印象に残っていますね。
――本作では、キャラクターの持つ二面性を繊細に演じ分けていらっしゃいました。イ・ジュンギさんは自分の中に二面性があると感じることはありますか?例えばそれはどんな面ですか?
二面性は誰もが皆、持っている部分だと思います。自分を隠して、むしろ世間に自分の姿がどう映るのか常に考えながら生きていく人生じゃないですか?この時代は。皆たぶんそうやって隠しながら生きていくと思うけれど…。
やはり僕にも二面性はあるでしょう。外から見るよりも、注意深く消極的で、ある時には計算高く、自分だけの考えを持って生きていると思いますし、本来のイ・ジュンギに戻ったときにはかなりディープな部分があると思います。
最近歳をとるにつれて感じるのは、どうすればバランスをとって生きていけるのか?ということ。全ての人の悩みではないでしょうか。多くの人がト・ヒョンスのように演技しながら生きていくように思います。考えてみれば自分のすべての感情を表に出して生きてはいけない時代じゃないですか?
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