「アイデンティティ」はパワフルなバンドサウンドを軸にしているが、トラックの展開や歌にも激しい緩急がついていて、とてもアグレッシブな曲だ。
「このアニメに、すごく疾走感や風を感じたんです。だからそれが音にも表れていて。でも僕にとって作曲って、頭にあるものを模写している感覚なんですね。元々あるものを聞ける音にしているだけっていうか。だから、作っているときはこうしようとか意識してなくて、さも当然かのように自然にできていくんです。あとで聴き返して、『何だこの展開は?』って思ったりしますし。『アイデンティティ』でイメージしたのは、草原があって母屋があって。『となりのトトロ』で、まっくろくろすけが登場するシーンで、風がふわって吹くようなシーンがあるんですけど、あの感じがずっと頭にあって。Aメロとかに、そういう叙情的な景色が結構出てるんじゃないかな」
過酷な運命の中で必死に生きて行こうという強い意志が歌われている歌詞。一番大事にした感情は?
「『アイデンティティ』というタイトルもそうなんですけど、自分が自分であるための存在意義を獲得するのにもがいてるというか。(『約束のネバーランド』の)主人公たちは番号で管理されてるんですね。ある種僕らもそうだなって。そもそもは誰にも名前なんてなくて。僕も勝手に秋山黄色って名前をつけて活動していますけど(笑)。でも、人間って自分らしさやアイデンティティが、なんでそんなに欲しいんだろうって考えると、優しさに辿り着いて。人ってことごとく優しさで傷ついているなって思うんです。何一つ正解がない世界に放り出されて、よりかかる部分が必要だから、人には誰かが必要で。でも、その誰かに向かって何かを口に出すと、やっぱり他人だから自分との違いがあって、傷つけたりしてしまう。そこで何で傷つけてしまうのかを明確にするためには、自分って何なのかを考えないといけない。それが存在意義を求めるってことで。この曲はそれが核になっているんですけど、そう思ったことを歌詞にストレートには書かないんです。目的地をそのまま書いちゃうと、人を動かす力にならない。だから、導く可能性だけは書いておこうっていう。それをアニメと無意識にすり合わせてこういう歌詞になったんです」
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