「薄桜鬼」の土方歳三、「機動戦士ガンダム00」のロックオン・ストラトスなどで知られる声優・三木眞一郎が、劇作家・演出家の倉本朋幸と結成したリーディングユニット「みきくらのかい」。声優・江口拓也を迎えての第一回公演『いとしの儚』、特別公演『曲がり角の悲劇』に続く第二回公演『怪談贋皿屋敷』は、「機動戦士ガンダム00」などで三木と共演経験を持つ声優・宮野真守を迎えて2020年12月19日に東京・日本教育会館 一ツ橋ホールで開催された。今回、一日限りの公演直前の2人にインタビューを行い、江戸時代を舞台に繰り広げられる群像劇を、2人だけで演じるという意欲作に懸ける思いなどを聞いた。
――公演直前のお気持ちをお聞かせください。
三木「今回、『みきくらのかい』二回目の公演を開催できることはとても嬉しいですし、この時期に会場に足を運んでくださるお客さまたちに、何か心が動くようなものを持って帰っていただけるような公演にしたいなと思っています。そして、何より宮野真守君がスケジュールを空けてくれたのが、本当にありがたいです(笑)。1年くらい前からお声がけさせていただいていたんですけど、この日を迎えられたことは本当に嬉しいですし、来てくださった皆さまにも喜んでいただけたらなと思っています」
宮野「やっぱり三木さんはカッコイイなと思います。最初は『鋼鉄三国志』という作品でお会いして、そこから縁があってアニメ作品を数多くやらせていただく中で、三木さんの背中を見て、たくさん学ばせていただきました。そして十何年経った今、三木さんがいまだ攻める姿勢を崩さないという姿に感銘を受けました。僕もやっぱり同じ気持ちで自分のできるものを常に追求し続け、新しいチャレンジやファンの皆さまに喜んでいただけるものを作っていくということを目指しているので、その中で三木さんが信念を持って作っている、このリーディング劇に参加できることはありがたいことです。そして、まず声をかけてくださったことが何より嬉しかったですね」
――三木さんが第二回公演に「怪談贋皿屋敷」を選んだ理由、そして宮野さんにお声がけした理由をお聞かせください。
三木「『みきくらのかい』自体が、日本語や言葉を大事にしていきたいというのがまずあります。その中で、お世話になっている劇団扉座の横内謙介さんの脚本が、とても情緒のある素敵な日本語を使う作品が多くて、それも含めて選ばせていただきました。また、前回の特別公演『曲がり角の悲劇』もそうなんですけど、それを狙っていた訳ではないのにとても時代に合っているなという気がしていて。庶民やエリートの人たちがいる中で、いろんなものに翻弄されていくという話が期せずして、今の時代と合っているという部分もあるので、そういうところを併せて『贋皿屋敷』を選びました。あと、宮野君の播磨が見たかった(笑)。上手い具合に全部が合致した感じでしたね」
――宮野さんが今回のオファーをいただいた際の感想をお聞かせください。
宮野「作品は今回をきっかけに知ったんですけど、そもそも今まで怪談は怖くて演じたことがなかったんです(笑)。でも、本を頂いて読んだら、ラブストーリーとしてとても胸にグッとくるお話で。もしもこうだったらというお話は、今までにもいろいろ演じてきましたが、怪談の『皿屋敷』がこういう物語だったんじゃないか、という発想からのラブストーリーの形が非常に面白かったです。ただ、『みきくらのかい』の方向性をすごく熟知していた訳ではないので『これ、どうやって演じるのかな?いっぱい人出てくるけど、これどうやってやるのかな?』という感じでドキドキしました(笑)」
――三木さんは今回、可憐な女性・お菊というご自身とはかけ離れた役を演じていらっしゃいますね。
三木「お菊を演じるつもりはなくて。台本に全部書かれていることを読んだ結果、出てきた声が可憐とおっしゃっていただけたんです。今後、お菊のようなキャラクターへのオファーが来るのを期待しています(笑)」
宮野「来るかなぁー(笑)」
三木「(笑)そんな感じで、計算したり演じるというよりは、素直にポンと最初に出てきた音があの感じだったので声優だからとはいえ、誰かを想像してそこへ寄せていってしまうと絵がない分、舞台の上の存在と乖離(かいり)してしまうので、無理して声を作るということは一切せずに、お菊としてそこにいられればなと思っていました。播磨さんとしてはいかがでしたか?」
宮野「最初に台本をいただいて驚きました。『あ、三木さんとラブストーリーなんだ!』と思って(笑)」
三木「ごめんね」
宮野「『おじさんとおじさんだけど...』って(笑)」
三木「ちょっと方向性変わるよね」
宮野「でも、それは朗読の良いところで。物語の流れに入って、いろんな役の声色云々ではなく、その瞬間にその気持ちでどう喋っているかだけなので、おじさん同士でしたけど(笑)、全く気にならなかったですね。自分がこの役を演じるとなった時に、どう表現するかというところの持って行き方や気持ち次第。アニメでは、あまり女性役をすることはないですが、今回僕が演じさせていただき、リーディング劇だとそれが成立するので面白いなと思いました」
――最後に、三木さんより公演に懸ける思いをお聞かせください。
三木「本当に全力で取り組んでいます。でも、見ていただいた皆さまの心が動かなければ意味はありません。そのような思いで舞台に座らせていただいていますので、全力で燃え尽きたいと思います!」
文・撮影=中村実香
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