深川麻衣、主演映画の撮影で「心が30回ぐらい折れたような気がします(笑)」<Interview>

2021/01/27 07:00 配信

映画 インタビュー

深川麻衣がインタビューに応じた撮影:永田正雄

――今回、演じた結子はどんな女性ですか?

東京から故郷の富山に戻って来た結子はずっと怒っているし、内面を1回包んでから出すということをしない。自分の感情がそのまま表に出る子だなと。

映画を見る人はそういうところにハラハラするだろうし、この子どうなってしまうんだろうって心配になるんじゃないかなと思います。

でも、そんな結子の不器用さはすごくかわいらしい。ただ、“怒りん坊”な人というわけではなくて子どもの頃、母親に捨てられたんじゃないかというトラウマを抱えたまま大人になってしまったから、うそが嫌いで融通が利かない性格に。その不器用さがちゃんと伝わったらいいなという思いで演じていました。

――そんな結子を演じて難しいと思ったり、苦しさを感じたりしたことは?

全編富山ロケで、撮影期間は20日間ぐらい。1回も東京に帰らないまま、本当に朝から晩まで作品のことを考える日々でした。

とにかく、結子は怒ったり、何かにイライラしたりするシーンが多くて。ずっと、そういう芝居ばかりしていたので、毎日疲れていました(笑)。

監督は、喜怒哀楽の中で「怒り」というものにこだわって撮っていたんです。
自分が脚本を読んで感じたこと以上のものを監督が求めていることもあったので、その差を埋めていくにはどうしたらいいのか。どんなアプローチの仕方があるのか。

監督の演出に対して柔軟に応えられなかったことが苦しかったです。

うまくできなかったなと思った時は「明日頑張ろう!」と気持ちを切り替えて撮影に臨むんですけど、またその日の夜には落ち込んでしまって…。ずっと、その繰り返し。心が30回ぐらい折れたような気がします(笑)。

――熊澤監督の演出で印象に残っていることはありますか?

タイトなスケジュールの中、天気と闘いながらの撮影だったんですけど、私が今までの作品で見せたことがないような表情を引き出したいと言ってくださって。
うまくできなくてテイク数を重ねても、そんな私の弱いところと向き合っていただいたのでとてもありがたかったです。

それと、尊敬できて頼れる先輩の俳優さんたちがいつもそばにいてくださったのでものすごく助けられました。

――その“先輩”の1人、高良健吾さん演じる一郎と結子の関係はとてもほほ笑ましかったですね。

一郎って海のように広くて大きい心の持ち主。常にイライラしている結子と一緒にいて、時には八つ当たりされることもあるので「もう、いいよ」ってなってもおかしくないんです。

でも、結子のことを否定するでもなく、ありのまま受け止めてくれる。結子があんな感じだから一郎の優しさがより引き立つし、そういう一郎だからこそ結子の気性の荒さが引き立つ。2人の関係性は面白いですよね。

――結子にとって一郎は唯一ホッとできる存在なのかもしれませんね。

一郎に対して怒ったりするけど、本当に心を許しているんだろうなと感じました。足を踏んだりしてじゃれ合ったりするところも幼なじみという関係があるからなのかなって。張り詰めていたものがちょっと緩むシーンになっていると思います。

――結子が企画した遺影の代わりに撮る「おもいで写真」はとてもすてきなアイデアだなと思いました。

遺影用の写真を撮るってなるとちょっと寂しい印象があったり、どうしても人生の終わりに向けての準備というイメージがあると思うんです。

でも、劇中に出てくる「おもいで写真」は自分の好きな場所だったり、ルーツを再確認できるものでもあるので、その人らしさがすごく出る1枚。もっともっと世の中に浸透したらいいのになって思いました。映画を見て「私も撮ってみたい」と思ってくれる人が増えたらうれしいです。