井浦新“朔”のつらい過去を“聞かない”仲間たちが温かかった<にじいろカルテ>

2021/02/12 12:35 配信

ドラマ

妻を亡くしている朔(井浦新)と真空(高畑充希)、太陽(北村匠海)が災害現場へ(C)テレビ朝日

「言いたかったら言う」を待つ真空の優しさ


隣村のキャンプ場で土砂崩れが発生し、けが人の治療の優先順位を決めるトリアージを手伝ってほしいと依頼された朔と真空、太陽。朔の過去を知る村役場の職員・霧ケ谷(光石研)が出発前に「大丈夫…?」と心配するような場面はあったが、霧ケ谷は事情を知らぬ村の面々に「自分から言うときまでは絶対に言わない」と言い、ベラベラとしゃべることはなかった。

朔は、土砂崩れの現場でトラウマがよぎり少々声を荒げることはありつつも、テキパキと処置をこなした。真空と太陽は、朔が何かを抱えていると悟るが「言いたかったらこっちが聞かなくても言う性格だろうし」と、それ以上、詮索することはしなかった。

ドラマではなく実際の生活でも、大切な友人や仲間が涙を流しているとき、気付いているのに気付かぬ振りをすることが本人にとってありがたいことがある。話を聞いてあげることが優しさとなる場面もあれば、聞かないことが温かい場合もある。その絶妙な差を描いたのが今話だった。

登場人物がすぐに思いを吐き出せば、物語の展開は早い。しかし、「にじいろカルテ」の虹ノ村に流れる穏やかでゆっくりとした時間の中では、朔の過去を本人がまだ語ることはしないというのが、とてもマッチしていた。おしゃべりな仲間たちなのに、あえて“聞かない”。その選択に、脚本家の高等テクニックがあったように感じた。

次回、太陽の心の本音を描く


次週、第5話は2月18日(木)放送。虹ノ村に超人気バラエティー番組「ぽつんと診療所」がやってくると聞いて張り切る村人たちだが、真空は病のことや、この村にいることをまだ母親に伝えられていないとこぼす。そんな中、テレビクルーのカメラマンが足から血を流していることに、太陽が気付く。

一方、佐和子(水野久美)の家で朔の涙を見て以来、なにかつらい過去があるのだろう…と察しつつも、本人が言うまでなにも聞かないと決めた真空と太陽。

そんなある日、真空は、畑で作業をする朔を窓からじっと眺めながら何やら考える太陽を見かける。どこか寂しげな表情で「ちょっとうらやましいなぁ」と呟く太陽に、真空はその意味を測りかねる。

◆文=ザテレビジョンドラマ部