――表紙にはこれまで林原さんが演じてきたたくさんのキャラクターが載っています。
内容が重いものもあるぶん、表紙はすごくポップにしたいと思って、シャボン玉とか泡とかの中にキャラクターがいるラフを編集さんに渡してデザインしてもらいました。長きに渡って追っかけてくれている人は買ってくれるだろうなと思っているんですけど(笑)、灰原哀ちゃんで最近好きになったような、10代の若い子にも手に取ってほしいなって。
私、ラジオも長くやっているんですけど、若い子のハガキやメールを読んでいると自分の限界を勝手に決めちゃったり、先を見ちゃったりしている子も多いように感じるんです。私が12、13歳の頃ってもっとバカだったけどなぁって(笑)。さっきの古本屋の話じゃないですけど、「無いなら無いでいいや」「Googleで調べて出てこないならいいや」って、探求を無駄な時間とか、面倒くさいと思ってしまっていることも感じます。もちろんそんな子ばかりじゃないけれど。悩みと向き合う時間が苦痛なのは誰でもそうなんだけど、「すぐ」解決しないとたちまち不安定な気持ちにだけになるような。
目の前に落ちてこないものはいいやっていうクールさも悪くないけど、面倒くさいの向こう側に本当に欲しかった答えや、その一歩先にお宝があるっていうのは経験しないと分からないことなので、これを読んだ10代の子が「面倒くさそう」と思ったらそれはそれでいいけど、「だからこの作品は面白いんだ!」とか「だから私が見ても、お父さんが見ても面白いんだ」とか、ちょっと紐付けられたら幸せですね。
――表紙がポップですし、知っているキャラ、好きなキャラがそこにいるという点からまずは興味を持っていただくのもありですよね
そうですね。中にはお歴々の先生方のイラストが掲載されていますので、ぜひ手に取っていただきたいです。小学館も講談社も集英社もKADOKAWAに集まるって、これがどれだけすごいことか(笑)。そこは編集の方が頑張ってくださったんですけど、そういう垣根も越えられるんだなって、“大人の事情”が霞ました(笑)。最初にお話したように、昔のアニメもサブスクとかで見られるようになりましたし、ここに載っているキャラクターたちが色あせることはないんだろうなと思っています。
――発売するのにピッタリなタイミングだと言えますね。
ちょうど今、新型コロナウイルスの影響でいろんなことが大変になってしまいましたが、エンタメのあり方とか、配信という繋がりの良さをじっくり考えるのにいい機会にもなったのかなって。この本の中で「過去が良かった」ということはひとつも書いてなくて、それぞれの時代を振り返りつつ、未来に向けて、そのまま持っていける感情を著しています。
――日本と同日に英語翻訳版の電子書籍が北米で発売されるというのもネットで世界に繋がっている今の時代に合っているような気がします。
日米同時発売ということに関しては、私自身、すごくこだわらせていただきました。私は音楽活動とかを大々的にしてきていませんし、ツアーもやっていないので、この本を持って土地土地を巡って、サイン会とかをしようと思っていました。でも、あっという間にコロナの足音が迫ってきて、自粛ということになって、「あぁ、サイン会できないなぁ」って。その分、時間ができたので書く時間も増えて分厚い本になりました。コロナがなかったらこのボリュームになってなかったかもしれません(笑)。
――考え方をポジティブにして、自粛期間に時間の有効活用をされた形ですね。
はい。今はまだ口にできない言葉ですけど、悲しいかな「コロナ」って地球始まって以来の初めての経験的な世界共通語になると思うんです。「あの時は大変だったね」って、いつか言える時が来ると信じて。日本だけが大変だったわけではなく、地球規模でこんなに大変なことってこれまでなかったですよね。日本語で読む人、英語で読む人、同じ苦しみの中、ロックダウンや自粛や、苦しくて大変な中、感想はそれぞれでも、アニメを好きな人たちが、同じ時期に、自分だけじゃなく、ふと、違う空の下の事を思えたら素敵だなって、日米同時発売にこだわりました。
――発売後、いろんな人からの感想、反響が楽しみですね。
はい。翻訳の方もとても頑張っていただいてるのをひしひしと伝わってきましたので、たくさんの方に読んでいただきたいと思っています。学校の先生とか図書館関係の方…。読んでみて、もし良かったらぜひ貸出の棚にお願いします。
(取材・文=田中隆信)
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