――最終回、樹木に告白した新谷(仲野太賀)に「ごめんなさい」「(好きになってくれて)ありがとう」と言う場面は、樹木の表情がとても切なかったです。
台本には「泣く」と書いてなかったけれど、二人ともどうしても涙が出ちゃいました。太賀さんとはこれで3度目の共演でしたが、ちゃんと話したことはなくて、このドラマでやっと話すようになって。“まこっちゃん”との距離感は、太賀さんだからこそできたものでした。樹木と“まこっちゃん”の関係に思い入れが強すぎて、演技しながらいろんな気持ちが押し寄せてきました。そのあと社長と結ばれるんだけど、それが想像できないぐらいに…。
いつもその場に生まれたものを大事にしたいと思っているので、あの場面ではそれができたかなと思うとうれしい。イチョウ並木の見えるカフェでの撮影でしたが、大事なセリフを言ったとき、バーっと風が吹いてイチョウの木が揺れたり葉が散ったりしたんですよ。それがまた雰囲気を作ってくれて、全てが味方してくれたシーンだったなと思います。カットがかかると、監督も泣いていて、「今まで見た中で最高の『ありがとう』だったよ」と言ってくれました。
――樹木が、社長と新谷の間で揺れる姿に、視聴者はときめいていました。実際に演じた森さん自身はどんな気持ちでしたか?
なんと言っても“火曜10時枠”。「私はこんな素敵な恋は一生しないだろうな」と思いながら、だからこそ大事に演じていました。恋という恋をしたことがないので、演じられるのか不安ではあったけれど、好きな人が自分を好きでいてくれるって本当に奇跡だなと。樹木は最終話まで報われない状態だったからこそ、社長が自分を好きなんだという表情を真正面で見たときは、樹木を通して思わずドキッっとしました。好きな人に好かれるってこんなにうれしいことなんだと、人生で初めて体験させてもらいました。
――“恋あた”主演を通して得たものはありますか?
物怖じしなくなったかもしれません。初主演というすごく高いハードルを越え、心折れずにやりきった実感があります。撮影初日は緊張しましたが、その後はリラックスして思い切り演技して、「それで良かったでしょ」と自分に言い聞かせるというか。主演としていろんな人と会ったり、いろんな人のお芝居を受けて自分の心が変わったり、すごく楽しい経験でした。次のステップとしては、もっと頼りがいのある主演キャストになりたいと思います。
(取材・文=小田慶子)
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