――この1年間コロナウィルスについて、政策を左右する重要なものから、ほとんど嘘に近いものまで様々な情報が飛び交っています。コロナに関する正しい知識は、どう入手すればいいのでしょうか?
大学教授という肩書きがある方でも、間違ったことを言っていることがよくあるんですよね。一般の方からしてみたら、やっぱり信じてしまいますから、本当に難しいです。
それこそ新聞とかテレビでも間違った情報が出てくることはあります。私はWHOやCDCなど公的機関が出している情報を信じたほうがいいと思います。
いまはそういった公的機関が、これまでは有料だったコロナ関連の論文を一般の方にもフリーで提供してくれています。
ただ、論文を読みこなす訓練を受けていない一般の方には、難しいですよね?ですので、私は、「一人の先生の意見を丸々信じないで、色んな先生の意見をちゃんと聞いてください」と申し上げています。
極端な話、コロナの存在すら否定する人たちもいます。そして、それに賛同する科学者も現れる。
極端な意見ってすごい熱狂的なファンが生まれるんですよね。自分にとって耳触りの良いことばかりを集める。そうするとどんどん考え方が偏ってしまう。そういう人に例えば「コロナは塩基配列も読まれています」と(事実を客観的に)伝えていかなくてはいけない。
――そもそも今回の新型コロナウィルスは、なぜこれほどまでに情報が錯綜するのでしょうか?
今回の新型コロナは(感染症専門医としての)経験則が外れることがすごく多いんです。中国で感染が始まったときに今のような事態になるかは専門家の間でも予想が分かれてました。
僕はここまでのことになると、実は思ってなかったんです。だから最初自分のブログでも「そんなに騒ぐ必要はありません」と書いたんですが実際はこうなりました。
オリンピックまでにワクチンはできますか?と聞かれたときも僕は「絶対できない」って答えてたんですが、できました。感染症専門医でも予想外のことがよく起こるので見極めが難しいんです。
――コロナで我々の生活は大きく変化しました、医療の現場でも何か変化はあったのでしょうか?
みんなよく手を洗うようになりました。
一般の方に比べれば、医療現場はもともと手はよく洗っていたんですが、僕ら感染症専門医から見ると、一般の医師や看護師が手を洗う回数は、正直これまで足りてなかった。
でもそれが今はかなりの回数になっています。(コロナの流行以降)アルコールの消費量が何倍にも増えてるんですね。それから、病院の作り方も、換気が十分にできる仕組みや、ドアもなるだけ手を使わないように、把手(とって)をわざと大きくして肘で開けられるようにしたり、自動ドアにしたり今後変わってくると思います。
――常にアップデートしていく情報を精査し、正しい情報発信を心掛けている佐藤先生ですが、様々な質問が投げかけられるなかで気をつけていることは?
答えがないことに関しては正直にわかりませんと答えるようにしています。(分からないことには)エビデンスが蓄積していくのを待つしかないです。
――最後に「バンドル」という考え方について教えてください。
バンドル=束って意味なんですね。医療現場でよく使われる言葉なんですけど何か一つのことだけやっても感染予防って達成されることはないんです。
今回のコロナも手洗いだけしてても全然ダメで、手洗いもして、マスクもつけて、距離もとって、換気もして、もっと言うとよく寝ないといけない。
さらに体調が悪いときは休むというのも一つの対策なんですよね。これを全部、束になって、まとめてやらないとこの感染症って抑えられないんです。
よく「何かひとつだけ感染対策を教えてください」とか聞かれるんですが、それは無理なんです。全部やらないとダメなんですよ。そのどれかひとつでも抜けちゃうと、感染するリスクがぐっと上がる。
「バンドル」を意識して全部やる。言われている感染対策を全部やるというのが、難しいかもしれないですけど一番大事です。
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