2019年、13年前の2006年に大ヒットした「結婚できない男」の続編「まだ結婚できない男」(共にフジテレビ系) が放送された。
主人公・桑野信介を演じたのはもちろん、阿部寛。こだわりが強く、皮肉屋で、余計なひと言を発してしまう建築家で、その性格ゆえ女性と衝突してしまい結婚できない。けれど、どこか憎めない、二枚目なのに三枚目感が漂う男。阿部寛のハマリ役のひとつだ。13年の時を経て同じ人物を演じ、しかもまったく違和感がないのも面白い。
思えば、阿部寛は多くのシリーズ物で主演している。彼のイメージを大きく変えた「TRICK」(2000年ほか、テレビ朝日系)では、態度がデカいが気は小さい自称・天才物理学者の上田次郎、「新参者」シリーズ(2010年ほか、TBS系)では鋭い洞察力を持った刑事・加賀恭一郎 、「下町ロケット」(2015年ほか、TBS系)では、実直で研究開発に情熱を傾ける社長・佃航平、映画「テルマエ・ロマエ」(2012年ほか)では古代ローマの浴場設計技師のルシウス・モデストゥスなど、いずれもハマリ役。しかも、それぞれがまったく違うタイプのキャラクターだ。
もちろん、多種多様な役柄になりきることができる名優は少なくはない。彼らの多くは同じ役者が演じているとは思えないほど、見た目や雰囲気までガラッと変える。けれど、阿部寛の場合、容姿や佇まいは圧倒的に “阿部寛”のまま。なにしろ190センチ近い長身と西洋人のような彫りの深い顔立ち。それを変えることは現実的に不可能だ。だから、見た目で役に寄せることはできない。にもかかわらず、まったく違うキャラクターであると見る人に感じさせる説得力は、阿部寛の俳優としての実力を如実にあらわしている。