――吉乃役は、これが映画初ヒロインとなる百田さん。彼女の新しい一面を見た思いがしました。
すごくプロフェッショナルな方だと感じましたね。百田さんにはいつもグループで明るく活動しているイメージがありますし、普段も変わらず、現場に花を咲かせてくれるような存在なんです。
その彼女が、吉乃という、決して明るくハッピーというわけではない女の子を演じて、ちょっと影のある空気感と世界観を魅力的に演じてくださいました。香芝としてはすごく演技をしやすかったですし、自然と気持ちが動いてしまうということができたような気がします。
――その一方で、王寺昇役の柿澤勇人さんとのシーンも多く描かれています。当初ぎこちなかった２人がだんだん打ち解けて、不思議な友情を築いていく。
カッキー(柿澤)とは普段から友人としてすごく親しくさせていただいています。ですので「打ち解け感」というのは出そうと思えば最初から出てしまうので、逆にそれを出さないよう、役柄の上での「壁」を作るのは大変でした。
でも実際のところは作品に入る前にも電話で話したりとか、同じ撮影現場にいられる間は一緒に過ごしていましたが(笑)。作品の空気感は共有できたかなと思いますし、彼の持っている独特なニュアンスは、王寺という役にもとても生きているような気がします。
――劇中、香芝はずっとスーツです。最後の金魚すくいのところでは、さすがに着替えるかと思ったんですが、やっぱりスーツでした。
そうです。香芝に関しては一時たりともスーツを脱ぐシーンはないですし、シャツ、ネクタイも変わることがない。
――実際の撮影でも1着だけだったんですか？
替えはありました。でも、作品上はどこも同じ1着ということで、そこは監督の中でも通したかったところだと思います。僕としてはいろいろな服を着たかったですよ。家にいるシーンとかでは楽な格好をしたかったですけど、許してもらえませんでした(笑)。
――タイトルの「すくってごらん」は、“救う”と“掬う”のダブルミーニングなのかなとも思ったのですが、最近、松也さんの中で“すくった”、もしくは“すくわれた”ことがあれば教えていただけますか？
コロナ禍の自粛期間中に救われたのは、キャンドルですね。火の力に救われました。どうしてもネガティブに考えがちな時期に、たまたま家にあるキャンドルをつけてみたら、驚くほど落ち着いて、そこからハマりにハマって。
キャンドルと「ゲーム・オブ・スローンズ」(HBOのテレビドラマシリーズ)には完全に救われました(笑)。
――最後に、読者へのメッセージと作品の見どころをあらためてお願いします。
金魚をメインにした、日本でしか表現できない映像美にすごくこだわって撮った作品です。そこをぜひ楽しんでいただきたいですね。もう一つは、「新感覚ポップエンターテインメント」と打ち出している通り、本当に見たことのない、意表をつかれる展開です。
「新感覚ポップエンターテインメントとは何なんだ、どういうことなんだ」と思われた方には劇場で確認していただいて、こういうことかと感じていただければと思います。ストーリーには普遍的というか、誰もが共感できるような感覚がありますし、僕もそこに注意しながら演技したつもりです。
こんな時だからこそ、皆さんに少しでも勇気を与えたることができたり、何かのきっかけになる作品になり得たら、本当にうれしいです。
◆取材・文＝原田和典
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