<試写室>反骨のお笑い求道者・村本大輔の目指すものとは? テレビ界を覆う“空気”の本質にも迫った意欲作「村本大輔はなぜテレビから消えたのか?」

2021/03/19 05:00 配信

芸能一般

エンターテイメントの本場・アメリカで、村本の笑いは通用するのか?

【写真を見る】スタンダップコメディーの本場・アメリカで、村本が英語でネタを披露! アメリカの人々の反応は…?


また、2019年夏にアメリカ・ニューヨークを訪れた際もカメラが密着。村本は本場の“スタンダップコメディー”に挑戦するため、アメリカへの移住を計画していた。渡辺直美や綾部祐二といった芸人仲間とは異なるアプローチで“笑い”に没頭しようとする村本の姿を映し出す。

スタンダップコメディーとは、たった一人でマイクの前に立ち、さまざまな「タブー」をネタにするというもの。アメリカにおける“笑い”はこれが主流で、村本は偉大な先人たちのパフォーマンスをYoutubeで目にして以来、強い憧れを抱いたという。

訪れたコメディークラブでは、黒人女性のコメディアンが「人種」や「性」といったデリケートな話題を臆すことなく笑いに変えていく様子も紹介。その光景を見れば、村本が求めているものがここにあることは明白だが、その中でコメディアンたちが果たすべき役割についても言及されている。

そんな村本が、「オープンマイク」と呼ばれるコメディアンたちのネタ見せの場に参加することに。自らの“笑い”をダイレクトに届けるため、村本は拙いながらも英語でネタを披露していく。その受け止められ方には、「なぜ日本ではこれが許容されないのか」という思いもよぎることだろう。

宮城、沖縄、そしてお台場…村本が笑いに込めた思いとは

2019年10月の台風で甚大な被害を受けた宮城・丸森町を訪れた村本は、半年が経っても復興が進まない現状に胸を痛める


テレビが村本を「遠ざけた」要因として語られるのは、村本自身の政治や社会問題に対する関心の高さだ。きっかけはインターネットテレビ局で報道番組を担当したことだったが、村本は番組を通じて全国を取材する中で、現地の人々とたくさん対話をしたことが大きな「気付き」になったと明かす。

ライブのため訪れた宮城では、2019年10月の台風で甚大な被害を受けた丸森町に足を運ぶ場面も。報道が減り、人々の中で「無かったこと」のようになる中、まるで復興が進まない現状を目の当たりにした村本の姿からは、地上波では見せたことのない一人の人間としての感情があふれ出る。

また、沖縄では「まーちゃん」こと小波津正光と対面。沖縄の抱えるさまざまな問題を笑いに変えてきたまーちゃんとの対話などを経て、村本が移動中に語った言葉が印象的だ。

丸森町の被害が、もう終わったかのように、テレビで扱わなくなった。原発の問題も沖縄の基地の話も『いつまで言ってるんだ』って、一生懸命過去のものにして風化させようとするんですけど。(みんな)平和だと思い込んでる。だから、平和じゃない所を指差して、平和だと思っている(みんなの)安心を傷つけたい(笑)

そうして村本は、相方・中川パラダイスと共に2020年最初で最後のテレビ出演へと向かっていく。とうに腹を括った彼が、ゴールデンタイムに叩きつけた笑いはどのようなものとなったのか。ぜひその目で見届けてほしい。