そしてもう一つ、環というキャラクターに共感せずにいられない要因が、演じる堀田真由の存在だ。
今作でドラマ初主演を果たした堀田。1998年4月2日生まれの22歳だが、28歳の環を驚くほどの貫録と存在感で演じている。
両親に誤解を与えることを承知でおなかの子を「お兄ちゃんの子」と言ってのけるふてぶてしさを持ち、職場では男性社員に引けを取るまいとバリバリ働く。一見、強情で強い女性だ。
だが一方で、少しずつ膨らんでいくおなかを見て「わぁ」と少女のような笑顔を浮かべたり、おなかの膨らみに向かって「女であることの意味をちょうだい」とつぶやく姿には、素直な喜びや不安が見え隠れ。そうした繊細な表情を積み重ねて、環は“強い”のではなく“強がっている”のだと伝えている。
だからこそ、同僚の野池から初めて「おめでとう」と言われた時に環がこぼした涙はいじらしく、いとおしい。母親に素直な思いを打ち明けて浮かべた涙にはホッとさせられるし、出産後、退院の日に見せた涙には痛みを感じずにいられない。環が涙を流すたび成長しているのがわかるから、見ているこちらも環に共感できるし、同じように涙を流してしまうのだ。
そして圧巻は、なんと言っても環の出産シーン。堀田が体当たりの熱演で挑んだ出産シーンはまるで、出産を追ったドキュメントを見ているかのよう。その気迫にわけもなく感動して涙があふれてくる。
現実には、今現在日本でサロガシーは行われていない。一方で、3月17日には国内で初めて、同性カップルの結婚が認められないのは違憲であるとの判決が出され、大きな話題を呼んだ。多様な選択肢がようやく議論の俎上に上った今、この作品が地上波で放送される意義は小さくない。
だが、まずは本作を、1人の女性の成長を描く物語として味わってほしい。時に迷いながらも自分なりの答えを見つけていく環は、実に魅力的でいとおしい存在だから。
◆文=YM
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