偉そうに言っていますが、私は自分の気持ちを伝えることが苦手です。学生時代、教科書を忘れても隣のクラスメイトに「見せて」がどうしても言えず、
(神様、どうか先生が私を当てませんように!叶えてくれたらなんでもします!)
と、授業中、学ばずに祈り続けるという時間の無駄遣いを何度もしました。「こんな願いでなんでもするな」と今なら思います。
こんな私ですから、大人になってからも相手に頼み事や相談をするのがとても苦手でした。例えば、ライブで誰かがとても面白い新ネタを披露していたとします。
(あのネタ、どういう風に作ったんだろう)
そう思っても、「どういう時に思い付いたの。良かったら聞かせて」と言うことができませんでした。
ある時、同期の芸人が面白い新ネタを披露していました。
「あのネタ面白いね。どうやって生まれたんだろう」
私は一緒に裏で見ていた田辺さんに言いました。(この時私と田辺さんはまだ猫塾というコンビでした)
田辺「あら、どうやって作ったのか本人に聞けば良いじゃない」
酒寄「え、そんなの悪いよ」
田辺「え?何が悪いの?」
酒寄「そんなこと私が聞いたら迷惑じゃない?」
田辺さんは、ついさっき「ごめん、通らせて」の一言が言えずに、ずっと後輩の背後霊のように立っていた私を見ていました。
田辺「あのね、人ってそんなに心狭くないわよ」
酒寄「でも…」
田辺さんは「私が代わりに聞いてあげても良いけど、それは違うわよね」と言って考え始めました。
田辺「じゃあ、酒寄さん!自分が言われたらって一回考えてみな!」
酒寄「自分が言われたら?」
田辺「そう!酒寄さんが誰かに『新ネタ面白かったよ!どうやって作ったの?』って聞かれたらどう思う?」
酒寄「あ、全然嫌じゃない!むしろ嬉しい!」
田辺「ね!なら聞いて大丈夫でしょ!これから心配になったら自分が言われたらどう思うかって考えな!自分が大丈夫って思ったら安心して言えるでしょ!酒寄さんって心広くも狭くもない平均的な心だから基準にして大丈夫よ!」
この時の田辺さんのおかげで、私は人に自分の気持ちを伝えることが出来るようになりました。はるちゃんも、自分が言われて嫌な思いをしない言い方で田辺さんにフライパン問題を伝えたら良いと思います。
しかし、ただの素敵な話で田辺さんは終わらせてくれません。この話にはおまけがあります。
酒寄「田辺さん良いこと言うね!」
田辺「まあねー!この方法最高でしょ?」
酒寄「でも田辺さん、人参苦手でよく私に人参食べてってお願いするよね?自分が言われたらどう思う?」
田辺「え?…うわっ!!!最悪なんだけどっ!!!ふざけんなって思うねっ!!」
今は田辺さん頑張って人参を食べられるようになったそうです。えらいですね。
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