――山寺さんはキャストの皆さんと面識は?
山寺:僕は初めての方が多いですね。たつ(鈴木達央)は昔から知っています。
水島:たっつん、チャーミングっていうか、可愛いいよね。
山寺:そうですね。でも、アーティスト活動もやってますし、ワイルドでかっこいいイメージかな。とっても繊細で真面目でもあったりして、いろんな面を持ってますね。あと、日高のり子は親友で、堀尾(正明)さんは舞台を観に来ていただいたことがあって、その時にご挨拶させてもらいました。望月(理恵)さんもお仕事でご一緒したことがありますね。
水島:堀尾さんは、朗読劇は初めてだとおっしゃってました。
山寺:キャスターのイメージが強いと思いますけど、元々役者をされてたんですよね。
水島:そうそう。役者さんから、そのあとアナウンサーに。
山寺:堀尾さんが元々役者だったって知らない人も多いと思うから、ビックリするよね。
水島:僕は知り合ってから10年弱ぐらいかな? 同い年なんです。いつか一緒に何かやりたいですねって話をしていて、今回実現しました。僕がプロデュースする公演は、キャスティングが先で、当て書きではないんですけど、イメージして脚本を書いてもらってるので、だいぶイメージに近い役回りになっています。
――それぞれがハマり役で。
水島:そうですね。皆さん、それぞれ期待してますけど、特に白狐役の七海(ひろき)さんに期待しています。かっこいい役ですからね。それと、出演者の中に僕の教え子が何人かいて、風ぼっこ役の山下音彩と猫又役の織田海誓はまだ小学生です。これが初舞台みたいなものなので、楽しみでしょうがないです。子供ならではの魅力も発揮してくれると思います。
――アニメや映画のアフレコと、演劇や朗読劇のような舞台でのお芝居とでは、臨む時の気持ちの違いがあったりしますか?
山寺:演じることに関しては、どちらもお客さんに楽しんでいただくという気持ちで臨んでいます。でも、今回は「妖怪大戦争」というモチーフで映画や朗読劇などメディアミックスで行うプロジェクトですよね。映画は特殊メイクによるビジュアルが大事だし、そこからたくさんのことを伝えることができますけど、朗読劇では何もないわけです。
河童役の裕さんは緑に塗らないし、語り部の僕も特に何かがあるわけではありません。音楽や装置はありますが、雰囲気を伝えるのは言葉なんです。それは難しいことだと思いますけど、朗読で具体的に演じないからこそ、脳内に浮かび上がらせることもあると思うんですね。
――想像力次第でイメージが広がって。
山寺:そうです。我々がどう演じるかにかかっているんです。自分でも音楽朗読劇をやっていますけど、それに関わる前は朗読劇に否定的だったんです。「そりゃあ、映画やアニメを観たほうが楽しいでしょう!」って。動かないし、(セリフを)覚えてもいないし、舞台の中途半端版、あるいは稽古の途中を見せてる感じってどうなの?って。
でも、朗読劇をやるようになって、“朗読には朗読の良さがある”と気づきました。すごい小説があって、どんなすごい監督さんやスタッフさんでも、読んだ人の脳の中のイメージのほうがよっぽどすごいから「これは映像化不可能!」って言われることがありますよね。確かに映像化は難しいかもしれないけど、読むことで想像力をふくらませ、イメージを浮かび上がらせることは不可能ではないと思うんです。
だから“朗読”というものを突き詰めていきたいなって思っていた時に、このお話をいただきました。読むだけだったら簡単だと思うかもしれないですけど、実はすごく難しいことをやろうとしているんです。チャレンジングなプロデューサーの勇気が、本当にすごいと思いました。
水島:(笑)
山寺:自分でハードルを上げてしまいましたけど(笑)、河童とかはみんなイメージが湧きますけど、聞いたことのない妖怪も出てくると思います。そういう時は、人それぞれ違った妖怪の姿を想像してもらえればいいと思うんです。みんなに世界観を味わってもらえるかどうか、良い朗読か悪い朗読かはそういうところで決まると思います。
――お二人にとって“妖怪”とはどんなイメージですか?
水島:人間次第。人間次第で仲間になったり、敵対したりするんじゃないかと思うんです。なので、あちら(妖怪)の意図よりも、こちら(人間側)の問題かな。
山寺:妖怪が生まれたのも、何かの戒めだったり、人間が生きていくための大事なことを教えるためだったりするかもしれないし。まぁでも、小さい頃に観た『ゲゲゲの鬼太郎』のイメージが強いですね。ねずみ男のなんとも言えない嫌な感じが好きなんです(笑)。
水島:妖怪なんだろうけど、ねずみ男って、人間の本質だよね。
山寺:そうそう。誰よりも人間くさい(笑)。人間の一番嫌な部分を見せられる感じがして、「なんだコイツ!」って思いながら、嫌いになれない。ねずみ男以外だと、子泣き爺が好きでモノマネばっかりしてました。
――本格的な稽古はこれからということですが、見どころを含めて、読者の方にメッセージをお願いします。
水島:山ちゃん、最後キレイにまとめてね(笑)。
山寺:そうですねぇ。『妖怪大戦争』プロジェウトの中で最もチャレンジとも言えるこの朗読劇。ぜひ観に来ていただきたいと思っております。きっと、この舞台を観た後に、人間も妖怪も愛おしく思える作品だと思います。
取材・文=田中隆信
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