明るくかっこいいジャニーズアイドル・北山宏光の面影はまるでない。冒頭、血の海のそばで微動だにしない姿にいきなり衝撃を受けた。正隆は過去の生い立ちから、世の中の全てに絶望しているような、闇を抱えたキャラクターとなっている。そんな空虚感で満ちた正隆を演じる北山の憑依っぷりが見事。目には光がなく常にうつむいた視線、猫背で肩を落とすなど、無表情ながらも複雑な感情を隠し持つさまを全身で表現している。
北山は本作で濡れ場にも初挑戦している他、回を追うごとに崩壊していく正隆の姿に、視聴者は「ここまでやるか!」と目が離せなくなるだろう。女性視聴者には嫌われかねない役どころのため、北山の覚悟と気合は相当なものに違いない。
妻・雪映に感情移入して見ると、苦しくなった。若い女性(萌)との不倫はもちろん、いつもと違う漬物で不機嫌になったり、挨拶をしても無視、正隆は結婚指輪すらしていないし、なにより一回も二人の視線が交わっていない…。それでも雪映は正隆を愛している。今後夫婦の過去が明らかになる中で、彼を愛し続けている理由が分かるのだろう。そして萌もまた、正隆を愛している。萌が暖かな日差しの中、正隆に「幸せ」だと伝えるシーンが印象的で、萌の笑顔がこの物語の切なさを倍増させていた。
正隆も思わず萌に見惚れてしまうが、日常が徐々に崩れていく。他の不倫作品とは一線を画す恐ろしい展開が繰り広げられていくという。「転機となる作品」と話すほど、全身全霊、体当たりで挑む北山の演技は必見。視聴後は、こんな北山宏光見たことないときっとつぶやいているだろう。
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