【漫画】引きこもりで小説家の弟と、弟を信じ続ける兄…“兄弟愛”を描いた物語に「めちゃくちゃ泣いた」「実写化してほしい!」の声

2021/08/06 07:30 配信

芸能一般 インタビュー コミック

優しすぎる“あなた”へのエールを込めた漫画


――この物語はどのようにして生まれたのでしょうか?

私には兄が二人いて、長男が少し泰平みたいな性格の人なんですね。子どもなのに、親より親のような振る舞いの兄や、優しいがゆえによく面倒ごとを背負っていた同級生などを昔から見ていました。

そして、「何故こういう人が損する役回りにいくことが当然の空気になっていくんだろう。こういう人こそ賞賛されるべきなのでは?いつか自身の性格に嫌気がさしてドライな性格になったらそれは本当に悲しいことだな」と思っていて、そういう人たちに「そのままのあなたがとても好きです」と伝えたい、何かエールを送れる漫画を描きたいと思ってできた漫画です。

でも「あなた方は自分より他人を優先しがちだから壊れないよう自分の事もちゃんと気遣って欲しい」とも伝えたいですね。

――特に気に入っているセリフや場面などありましたらお聞かせください。

兄が一緒に住むことを提案してきた時を回想し、「あの時俺は 兄貴の幸せと引き換えに自分の生活を取ってしまったんだ…って思ったよ」と、弟が語る場面です。大切な人には幸せになってほしいのに、自分自身が不幸にしてしまっているのではないかという自己嫌悪がでている感じがして好きです。

また、終盤に兄が弟を説得する場面での「俺は信じてただけなんだ お前に力があるってことを 俺の助けなしでも大丈夫だってな」というセリフも気に入っています。“それぐらいお前は本当は強いんだよ”というメッセージは、兄と弟両方の願い、そして信じる方向でもあるので、ちゃんとこれだと思う言葉を見つけられて良かったです。

――一方で、描くのが難しかった場面はありますか?

兄が弟の才能に気づく回想は、読者にリアリティを感じてもらわないと話に納得感がでないので少し悩みました。たまたま西原理恵子先生のエッセイを読んでいて、幼い頃親の夫婦喧嘩の間を取り持とうと無邪気な子どもを演じたけど、どうにもできず傷ついた記憶がある…という描写に「そういえば私にもそういうことあったな」と思い出したので、それを応用しました。

――ご自身の体験だけでなく、音楽からもインスピレーションを得た作品と伺いました。

全体の話の雰囲気は星野源さんの「くだらないの中に」のように、温かいけど痛みも伝わるようなそんな雰囲気を目指しました。そして最後の場面はYogee New Wavesさんの「SAYONARAMATA」の爽快感を目指しました。どちらも凄く好きな曲です!今回は既にストーリーが頭の中にあったので、この2つの曲にフィットするように描きました。

音楽からインスピレーションを受けることは多く、持ち込みのために初めて描いた漫画「魂のエラー」はDAOKOさんの「ゆめうつつ」がテーマとなっています。2018年の「母と娘」はハナレグミさんの「家族の風景」、2019年の「知らない神様」はceroさんの「Contemporary Tokyo Cruise」がきっかけでした。

――Twitterでのアップ後、とても大きな反響があったかと思います。特に印象に残っている読者からの反響があれば教えてください。

兄・泰平のように“支えたい、守りたい”と思う人がいる方は泰平に、弟・稜平のように“申し訳ない”と思う人がいる方は稜平に共感している方が多くて、まるで写し鏡のようで印象深かったです。物語を通して皆さん自分を見つめるものなのだと勉強になりました。

また、この漫画は2018年のちばてつや賞奨励賞をいただいた作品なのですが、今回Twitterにアップしたところ多くの方が「コミック化待っていました。当時からとても好きな作品です」と仰ってくださって、凄く愛されている作品なのだなと感動しました。本当にありがとうございます!