元宝塚トップ娘役・真彩希帆が憧れの石川禅にインタビュー!「いろいろお聞きしたいことがあったんです!」【連載:真彩希帆の知りたい!芸の道#1前編】

ミュージカルファンを魅了する歌声のルーツとは?

【写真を見る】念願の石川禅との対談に満面の笑みを見せる真彩希帆 撮影=後藤利江

石川:俺は、ミュージカル俳優を目指していたわけじゃないのに「歌の勉強か…」って思って。でも、どうせやるんだったらちゃんとしたところでジャッジメントしてもらわないと、グローバルに通用する歌なのか分からないじゃないかと思ったんです。

そんな時、同期の子が「これ受けてみたら」と持って来てくれたのが「月刊ミュージカル」という雑誌の裏表紙に載っていた「ミス・サイゴン」のキャスト募集要項だったんです。
これなら、外国人の方がジャッジメントしてくれるし、最終選考まで残らなくても二次、三次まで勝ち抜ければ「ある程度自分は歌えるんだ、って思えるな」と思って受けたの。
そしたら、最後まで残れちゃって、そこから始まったんです(笑)。

真彩:「ミス・サイゴン」の時は、緊張されましたか?

石川:全然!だって、怖いもの知らずだったから(笑)。未だにそうなんですけど、私楽譜も読めないんですよ。

真彩:私も楽譜読めないんです!しかも、私ピアノも弾けなくって(笑)。

石川:本当!? 俺もですよ!耳だけを頼りにやってきてるし、絶対音とかもわからなかったの。音が鳴ったら、歌うタイプ。
だから「楽譜読めなくちゃだめなのかな」って楽典を買ったこともあったんだけど、ただ本棚の肥やしになっちゃって。

真彩:そのお話を聞いて、ちょっと勇気が出ました(笑)。

石川:当時の年齢だったら普通、クリス役でオーディションを受けると思うんだけど、「ブイ・ドイ」という曲が好きで、その曲を歌いたくてジョンという役で受けたんです、怖いもの知らずだったので(笑)。でも当然、高音のフレーズが出なくて。
その時、「次来るまでに2度上げてきなさい」と審査員の方に言われて、音を2度上げるというのはとんでもないことなんだけど、その時は専門用語も分からないし、次来るまでに…ということは「1次に通ったんだ!」って(笑)。

声楽の先生に「最後は勇気だ!」って言われて2次も受けに行ったのですが落ちて…。その後、アンサンブルでどうですか?というお話をいただきました。

審査が終わった後に「クリスで受けていたら人生変わっていた?」とスタッフの方に聞いたら「もう少しいいところまで残ったかもね」なんてことも言われました。

真彩:なるほど…役によって、求められている声質とかって違いますよね。
私、禅さんが声優をされていたアニメ映画「アナスタシア」(1998年日本公開)のディミトリ、小さい頃からずっと観ていて大好きなんです。

石川:ありがとうございます(笑)。

真彩:声優としてのお仕事って、制作の方々が「あ、この声!」って思わないと選んでいただけないと思うんです。
「自分の声はこれだ」とか「こっちのが向いているんじゃないか」というのは、経験を積む中で分かっていったのでしょうか?それとも、いただいた役によって声を合わせにいっているのでしょうか?

石川:声を変えるという感覚は全然ないんですよ。
声優の仕事の多くは洋画の吹き替えになるのですが、そうすると外国人の役者が画面に出るじゃないですか。
その役者さんの雰囲気にあわせて自分の声を出すんだけど、その時には自分の存在とかこだわりっていうのはないんです。
出てくる外国の方の声質を似させなきゃいけないなって思いながら台本を見た時に、「こんな感じでしゃべってみよう」って思ってしゃべっちゃう。
あんまり意識はしてないです。「レ・ミゼラブル」のジャベールをやる時もマリウスをやる時もね。

真彩:「この役の時に出てくる声だから…」って感じなんでしょうか?

石川:うん。逆に「この役だからこういう声でやる」っていう役者さんいらっしゃるけど、すごいなと。大事なのは使い方だってわかってからは、キンキン声だけじゃなくてソフトな声も出すような修正をするようになったんです。

真彩:すごく勉強になります。そういえば、さっき小池先生のお話が出ましたが…。

石川:「エリザベート」の時、小池さんがフランツをやらせたいと思ってくださっていたみたいなんだけど「今のままじゃダメ。そんなキンキンした声じゃダメ」って。
20歳くらいから始まって60歳くらいまでの人生を描いていくから、若い時はその声でいいけど、フランツが歳を取ってからは、大人の発声が出来ないと持たないよ」って言われたんです。
その時、他の先生にも「ミックスボイス出せないの?」って。

真彩:へえ~!

石川:「ミックスボイスって何でしょ?」みたいな(笑)。
それでミックスボイスを教わった時に、声の響きの良さってキンキン出せばいいわけじゃないんだってことがわかってきたんですよ。それくらいから、本当にいいと感じる声や、俺が好きなだと感じる歌声はそういう声だなと気付いたんです。
今まではキンキン張っているような歌声が好きだったのですが、ミックスボイスを教わるようになり、その声の仕組みが分かってからは「この人の声は深みがあるな~」って感じる歌い手さんの声がすごく好きになったんですよ。

真彩:なるほど!

石川:だから、派手に歌っているよりも柔らかく深く伝わってくる声のほうが好きです。

真彩:それって禅さんのお声じゃないですか!

石川:そんなことないですよ(笑)。


[インタビュー後編へ続く]