――水面に映った風景に「怖さ」という感情を抱くような、荒神さん独自の感性や感覚が興味深いです。
私は自分がそこまで独特だとは思っていなくて…誰しもの中に潜在的にある感覚かもしれません。例えば、「常識的にはこうですよ」っていうことや、「こういうのが私たちの日常ですよね」って思っていることが、ちょっとしたきっかけで変わることってありますよね。常識や日常の感覚って、多分、私たちが慣れていくことによってできているもので…。
例えば、(宙を手で示して)ここの空間には何もない、というのが当時の私にとっては「常識」だったんですけど。小学生の頃、「もしかしたら、細かい単位で見ていくと何もないと思っている空間に何かがあるかもしれない!」と思って、学校の5階の窓からトイレットペーパーを投げてみたことがあります。
そうすると、空間には何もないはずなのに、まるでそこに何かがあるかのようにヒラヒラ波打って落ちていく。それを「ね、やっぱ何かあるよ!」って友達に見せたことがありました。後で普通に先生に怒られたのですが(笑)、その時に一緒に謝ってくれた母からは、「そういう感覚って大人になったら忘れるのよね。覚えておきなさい」という意外な言葉が返ってきて、それは衝撃的で忘れられませんでした。
母が言うように、こういった気持ちは、誰しも最初は持っているけど、いろいろな理由があって、次第に忘れていくのかもしれない、そして必要のないことと思われるかもしれない。でも、そのフッと吹いたら消えそうな人間の感覚を信じられたら、そんなことが起こっていいんだって思えたら、それは、すごいことだと思うんですよね。些細な気付きが、それまでの常識を覆すことだってあると思うんです。
――地学や物理学など、学究的に学ぶこともありますか?
興味があれば調べたりもしますし、科学者の方とお話する機会もあって、何代にもわたって専門的に研究していくというお話も聞くと本当にすごいなと思います。物理学の本から作品の構想が始まったりすることもあります。
ただ、私たちに出来ることはアートという、違った方法や角度から世界を捉えていくことだと思うので、時に学究的に見たら間違っていると思われるかもしれないことでも、人間の小さな感性を信じてみるということを大事にしたいと思っています。でも、面白いなと思うのが、ノーベル賞をとられた科学者の方も感性的なひらめきが研究の大事な発見につながるという話もあって…いつか何らかのかたちでお話したり、一緒に何か作れたりしたら、面白いなと思っています。
※アートチーム・目[me]の正式表記は「e」の上にアクサンテギュ