子どものころから虫が大好きだった宮竹教授。今の道につながった直接のきっかけは、沖縄県職員時代に趣味で始めたアリモドキゾウムシの“死んだふり”の研究だったという。
「(虫の死にまねが生き残りに本当に役立っているのかを)ちゃんと立証したデータがまだないことに気付いたんです。ワクワクですよね。今この瞬間、世界でこれに気付いているのは私だけなんだ…これは研究者としてものすごくうれしい瞬間ですね」と宮竹教授。
その後、岡山大学の教授に就任。論文が世界的に権威ある科学誌で紹介され、やがて、海外の名門大学で使われる生物学の教科書でも大きく扱われるほどに。さらに近年は、虫の死にまねの研究が人間の医療に応用できる可能性も見えてきているという。
「研究をやり始めたころは『そんなことをやって何になるんだ』と言われました。でも、世界で誰もやっていないことを公表すると、人類の知識が一つ増えるわけじゃないですか。それは、小さくても大事なことなんじゃないかと思い続けてやっていましたね」と宮竹教授。
それが今や、「虫の死にまね」の世界的権威。「小さな分野でも、その道を究めてトップランナーとして走ると、見えてくる世界が違う」としみじみ語った。
そんな宮竹教授、大学受験時は「虫ばっかり取って受験勉強まったくしていなかった」のだとか。当時の偏差値は39.5で、得意なはずの生物も偏差値41。志望大学はすべてD判定だった。これには林先生も「率直に申し上げて、これはかなり悪いですね」と苦笑い。
だが、琉球大学3年次に「生物の行動学」に出会い、「世の中にこんな面白い学問があるのか。これは遊んでいる場合じゃないぞ」と一念発起。生物の研究に目覚め、没頭した。
「共通一次試験で200点満点中65点っていう英語の成績でしたけど、今英語で本書いていますからね」と振り返った宮竹教授。
インタビューを終えた林先生は「教授の生き方からまず学ぶべきは、どんな小さな分野でもまずNo.1になること。そうすることによって景色が変わるっていうことが大事だと。そして、今は役に立つかどうか分からない研究、そこへの資金を止めてしまうのは長い目で見たときに大きな損失につながるので、そこは何とかしてもらいたい」と提言し、締めくくった。
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