――ネットといえば、窪塚さんの活動を見ていると、近年はインスタライブなどSNSでの発信に力を入れているように感じます。
そうっすね。ただ、インスタライブは、あんまり記憶がないことが多いんで(笑)。翌日起きて「あれ?俺、昨日インスタライブやってたっぽい。まだ、酒残ってんなー」と思って、SNSでエゴサしたら「やっぱりやってるわ」っていうね(笑)。自分の行動を全く知らない人のツイートで把握できる時代になってるのは面白いし、そういう一挙手一投足を監視される時代でも、自分らしく自由に生きたいと考えてるかなと。一言一句、みんなのお手本として生きていくことなんてできないから、こういう仕事を始めたわけで。俺らに聖人君子みたいなことを求めるのが今の時代だけど、そこへのアンチテーゼ的な意味で、時代の排水口として俺のインスタライブがあってもいいのかなとも思います。
――そういった、一挙手一投足を監視される時代ゆえの息苦しさは感じませんか?
感じないこともないけど、バランスが取れなくなるほど怒ってもないし、イラついてもない。そういうのを込み込みで、楽しめればいいかという感覚です。なんか、昔のほうが時代や社会に期待してたんだと思う。だから、もっと怒ってたし、もっと「あー!」ってなってた。でも、“足るを知る”というか、自分のバランスが見つかって、世の中が自分の思い通りにしてくれることなんかねぇよなと、あんまり怒らなくなった。腸活の効果もあるのかもしれないけど、歳を重ねて、ストレス耐性がついてきたのかもしれないです。
――今作は、窪塚さんがドラマで活躍していた時代を知らないスマホ世代の若者もたくさん視聴するかと思います。窪塚さん自身、今の若者からどう見られたいと考えますか?
窪塚:「どう思われたい」は、昔からあんまりないっすね。思いたいように思えばいいし、こう思ってほしいって願ったところでそう思われない世界なのはわかってるから。ロバと老夫婦の話、知ってます?
――いえ、知らないです。
ロバを連れて老夫婦が歩いている。おじいさんが乗って歩いていると、村の人は「おばあさんがかわいそう、おばあさんを歩かせるな」って言う。今度、おばあさんが乗っていると「おじいさんを歩かせるな」って言う。二人で乗って歩いていると「ロバがかわいそう」。二人で降りて歩いていると「あいつらはロバの乗り方も知らない馬鹿野郎だ」って言われる。結局、みんなに合う答えはない。だから、自分がどういうスタイルで生きていくかが大事っていうことで、俺は何年か前からこの話がすごく好きなんです。
――いい話ですね。
自分の中に基準がないと、他人に聞き出すから。聞く人によって返ってくる答えは違うし、結局、何の答えも出ない。道に迷うだけ。特に今の時代はそうなりがちだと思う。「俺って幸せだよね?」「俺って間違ってないよね?」って言い出したら、もう迷路の入り口で、「俺はこうだからこうなんだよね」って言い切ることが大切なので、そこは忘れないようにしたいです。
――とはいえ、今は、自分の中の基準を見つけて生きるのが難しい時代だとも思います。
それは、時代のせいとか、人のせいにしているから自分の基準が見つからないんじゃないですかね。でもたしかに、そういう時代だと思うし、「みんながこういう意見だから…」みたいな同調圧力もあります。だからといって、チューニングするんじゃなくて、自分の中に基準があれば、上とか下とか左とか右とか関係ない。真ん中だから。その自分の真ん中を確かめる術(すべ)は、自分以外のすべてのことだと思うので、この作品が指針になる一助になればうれしいです。
◆取材・文=こじへい
この記事の関連情報はこちら(WEBサイト ザテレビジョン)