――本作はヨーロッパ企画の上田誠さんが脚本を担当されていて、原作漫画からの引用など「刃牙」シリーズへの愛にあふれた脚本となっていました。読み物としても非常に面白かったですが、改めて脚本を読まれていかがでしたか?
松本:今まで経験のないせりふの量だったので、読めば読むほどプレッシャーでした(笑)。でも読んでいて面白かったです。「グラップラー刃牙」を知らない人だったら「何言っているのかわからないんじゃないかな」とは思いつつ、そんなことが関係ないくらいの内容になっていて。
シチュエーションもコロコロ変わりますし放送時間も30分なので、何も考えないで見ても楽しめるドラマになっているんじゃないかなと思います。
――膨大なせりふを覚える際はどういったアプローチで取り組んでいかれましたか?
松本:ちゃんと漫画を読んで「こういったことが言いたいんだな」と理解した上で、あとはリズムで覚えていきました。漫画を読んだだけであかねと近い感覚ではいられたので。その中でも「バキ特別編SAGA[性]」は、結構真剣に漫画を読んでから台本を読むっていう流れにしていました。
――毎回展開される居酒屋での女子トークも非常に面白くて、好きなものを仲間同士で熱く語り合う感じが非常にリアルに描かれていました。あのシーンは演じていていかがでしたか?
松本:楽しかったです。ただ単にカラッとした楽しさではなくて、ちょっとジメッとした感じのお芝居だったので(笑)。監督からも「その笑顔じゃなくて、もっと『ニタニタ~ッ』としたもっと気持ち悪い感じで!」とか、今まで受けたことのない演出をたくさんしていただいたので、それがすごく楽しかったですね。やればやるほど面白さが広がっていったと思います。
――少しやりすぎに映るくらいがちょうど良いというか。
松本:そうですね、本当に盛り上がっている場面はそんな感じでした。逆に会社のシーンはあかねが結構閉じこもっているというか(腐女子であることを)出さないようにしているので、そのギャップは出ていたのかなと思います。「やろう、やろう」ではなくて熱を上げるみたいな、「テンションを高く」ではなく「温度を高く」という意識でやっていましたね。
――居酒屋のシーンだけでなく、自宅で一人漫画を読んでいるシーンでもあかねは熱くなっていきますが、あのシーンは演じていていかがでしたか?
松本:あのシーンはモノローグを流しながらのお芝居ではあったんですけど、漫画を読んでいる時はそこまで(モノローグに)合わせずに、あんまり表情には出てこないんだけど心の声はワーワーうるさいというのを狙って監督が撮ってくれていました。
――演じる前にモノローグを撮るというのも、映像が無い分なかなか難しい部分もあったのかなと思うのですが…。
松本:そうですね、お芝居する上で必要なモノローグを仮で先に録っていて、お芝居を全部撮り終えてから別日にじっくり時間をかけて録り直しました。せりふ量が膨大なので、全部で12時間とかはかかっていたんじゃないかなと思います。
――あかねが毎回授業風だったり記者会見風だったり、さまざまなバリエーションで“脳内プレゼン”をしていくシーンも印象的でしたが、こちらのシーンはいかがでしたか?
松本:だんだん私の話を聞く側の人数が増えていくので、それがもう恐ろしかったですね(笑)。現場に行くたびに思っていた何倍もの人が集まっていて、「どんな感じでやるんだ?」って見られているような気がしたので、そういう恐ろしさはありました(笑)。
あと、やっぱりあかねの妄想の中で起きていることなので、記者役の方々がすごい熱量で来てくれるんです。もうめちゃめちゃ「記者」として向かってきてくれるので、それが楽しかったですね。
それから、結婚報告の囲み取材風のシーンでは、台本には無いんですけど何も付いていない左手の薬指をみんなに見せるとか(笑)、「これやってみましょうか」っていう、現場でアイデアがどんどん出てくるので、みんなで作っている感があってすごく楽しかったですね。
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